第十話「管理者の世界」


 そして再び戻ってきたのを待ち構えていたのは、武器を持った管理者たちだった。

「おい、どういうつもりだ」

「いやぁ!なに、この世界に来たものは死んでもらうのだよ!ただそれだけだ!」

「だったらさっきの世界を切り離すなりすればよかったじゃねえか!なぜ俺たちを戻したんだ!」

 管理者のリーダー格の男はにやりと笑ってこう言った。

「それじゃあつまらないだろう?私たちは君たちのような人間が死ぬ瞬間、君たちのような人間を殺す瞬間を見るのが一番楽しいんだ!」

 狂ってやがる…。リモはエルになってるな。囲まれてはいるが、人数は多くない。だが、相手の武器はすべて不思議な威圧感がある。おそらく俺の刀や銃と同じ特殊なものだろう。片手剣や拳銃など、オーソドックスな武器から鎌やガントレットなどあまり見かけない武器もたくさんある。

「…シャァァ!」

 先頭の鎌使いが突っ込んでくるので躱す――が、よけきれずに浅く斬られる。(クソッ、間合いが掴みにくい…!)。何度か切り結び、隙をついて拳銃で何度か撃ち、ようやく倒す。エルのほうは、片手剣使いと短剣使い、拳銃使いを相手にしていた。拳銃の弾を弾きつつ剣を躱し、隙をみて斬りかかる。そうして相手の数は減っていき、最後の一人となった。最後の一人は、隅のほうでガタガタ震えていた。手には武器すら持っていない。ここに残るのが俺たちしかいないことに気付くと、そいつはひぃ、と小さく悲鳴を上げながら後ずさりしてこう言った。

「わ、私は、違うんだ!私はあんないかれた連中とは違う!信じてくれ!怖かったんだ…、あいつらに殺されるのが怖くて何も言えなかった。あいつらはおかしかったんだ!私は何も悪くない、だから…」

 俺たちはいたたまれなくなって、その場を立ち去ろうとした。だが、次の瞬間

「ガッ!アアアアアア…」

「くっ、ふっはははははは!いやぁ、お見事お見事!怯えてるふりをしてブスリ…とか期待してたんですがそんなこともなさそうだったんで殺してしまいましたよ。あなたたちとは楽しめそうですがね!」

 こいつ、いつからここにいたんだ?まったく気配を感じなかったぞ。エルのほうを見ると、少し様子がおかしい。いつもとは違ってガタガタと震えている。だがそれでもキッと睨みつける。

「お前は…あの時の…!!」

「おやぁ?あなたはもしや…あの時処理した世界の生き残りですか?ははっ、これは驚いた!私たちのやっていることを突き止め、私たちを止めようとした世界の!無駄な世界の住人か!」

「黙れ!おまえたちは…仲間を…家族を皆殺しにした…。同じ苦しみを味わわせてやる…!」

「落ち着け!まともに戦っても勝てない!」

 さきほどまで戦っていた相手とは違い、恐ろしいオーラだ。

「お前、なんで俺たちにフェルニムを渡したんだ…って俺たちを殺すためだよな…!」

「話は終わりましたか?こちらから行きますよ…!」

 言うと同時にものすごい速度で突っ込んでくる。

「チッ…!」

「ははははは!あなたの憎悪はそんなもんですか!?」

 エルとフュリアスが戦うが、徐々にエルが押されている。フュリアスの使う大きめのソードブレイカーに苦戦しているようだ。助太刀に入ろうとすると、デザートイーグルで牽制してくる。俺がイライラしながら見ていると、エルがソードブレイカーで肩から斬り裂かれて倒れる。

「エルッ…!」

「よそ見している場合ですか?」

 フュリアスが言うと同時に斬りかかってくる。俺も刀と拳銃で応戦するが、まず武器の性能が違う。俺の使う拳銃はP225なので分が悪い。それに相手はソードブレイカー使いだ。気を抜いたら得物を折られる。おそらくエルもそっちに気を取られているうちにやられたんだろう。

「まだまだこんなものじゃ戦い足りませんよォ!」

 クソッ、このままじゃジリ貧だ…何か手はないのかっ!

 その時、倒れていたリモがすうっと立ち上がり、音もなくフュリアスの背後からナイフを振り下ろす。フュリアスが驚いて舌打ちしながら飛び退く。その時のリモには表情がなく、殺気も一切感じられない。二人が何度か切り結ぶが、フュリアスが徐々に押されていく。リモは体から血をダラダラと流しながらフュリアスを圧倒する。

「なぜ…なぜだ!お前はどうしてその状態で…ひぃ!許してくれ、私が悪かった!だからっ」

 だがリモは無表情のまま首をかしげてフュリアスに容赦なくトドメを刺した。そして、そのまま倒れる。

「お、おい!大丈夫か!」

 リモを見ると、顔が真っ青で息もだんだんゆっくりとしていく。その時、突然腹部に痛みを感じた。見ると小さなナイフが刺さっていて、フュリアスが笑いながら今度こそ死んだ。死に際に放った一撃だったので深い傷ではなかったが、傷がズキズキと熱くなり始めた。(こいつ…まだ生きてたのか…そんなことよりリモだ!)俺はリモを抱きかかえたままリタの元へ向かった。

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