魔法不適合者と奴隷少女

@kinoko3

第1話プロローグ

 物音ひとつ聞こえない隔離された空間。闇と光が支配する世界で一人の少女は祈りを捧げる。天から降る光によって少女は照らされていた。


『汝は望みの対価に何をさしだす?』

 そんな神秘的な空間に神々しい音霊が響く。


「もし望みが叶うのなら……私はすべてを差し出します」

 一人の少女は両手を力尽く両手を握りながら言う。


 覚悟は出来てる。ううん、覚悟なんて関係ない。覚悟なんてなくたって……


『それは命をも差し出すと言うことか?』


 その声に少女は震えた。しかしそれは一瞬のことだった。


 昔は自分の命に価値なんてないって思ってた。だから死ぬことを怖いって考えたことはなかった。でも今は違う。死ぬことがすごく怖い。全身が震えるほど怖い。


 これはあなたがくれた大切な感情。私の宝物。だからこそこう言える。


「お望みとあらば喜んで差し上げましょう」


『なぜそこまでして望む?』


「私を地獄から救ってくれた恩人に恩返しをしたいからです」

 真っ暗な世界で、あなたは私を見つけてくれた。私の光になってくれた。だから次は私があなたの光になる番。


『たったそれだけの理由でか?』


「神であるあなたにとってはちっぽけなことかもしれません。しかし私にとってはとても大切なことなんです。だから……お願いします!」


『……良かろう。汝の願い叶えてあげよう。しかし忘れるな。必ず望みの対価を汝には払ってもらうぞ』


「もちろんです」


 こんなことをしてもあなたは怒るだけかもしれない。喜んでくれないかもしれない。あなたは優しすぎるから。


 だからこれは甘えん坊で泣き虫である私の最後のわがまま。


 だから待っててね。たとえ嫌われても、軽蔑されたとしても必ずあなたを救ってみせる。


 たとえ私が命を落とすことになったとしても救ってみせる。


『それでは始めようか。転生の儀式を』


「はい。お願いします」

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