第10話 対面

細かく装飾が彫り込まれたニメートル程の木の棒四つと掌に収まるほどの色付の硝子玉が大量に運ばれてきた。



「いいか、ちゃんと組み立てろよ。少しでもずれたら映らないからな」


「わーってるって!」


「おい、これ左周りだよな」


「ばか、まずは組み立てしないと嵌め込めねえって!」



そしてそれを組み立てているのは捕獲集団だ。

まず木の棒を上手く噛み合わせて四角の枠組みを作り、上手く地面に立たせる。そして上の棒から左周りに硝子玉を装飾にある丸い穴の空いているところに嵌め込んでいくと、硝子玉が白と青に輝きだした。



そして、最後の一つを嵌める前に、捕獲集団のリーダーらしき男が周りの部下に指示を出して神官達をやんわりと追い出している。神官は「何故神に使えるものとして神のお姿を拝ませてはくれぬのか!?」と叫んでいたが、部下と共に教会の外に退場した。



教会に残されたのはエレネストテレンシオ少年と捕獲集団のリーダーの男。そして謎の枠組み。



「良いですか?これから貴殿方はこの時代で初めて神のお姿を拝まれる人間になるのです!私だって遣いになってから初めてなんですから!くれぐれも失礼の無いようにしてください!!分かりましたね!!」


「………」

(父、意味が分からんと言う顔をしている)


「………」

(少年、飽きてきてこっそりアクビをしている)


「……、では、付けますよ」



恐る恐る男が最後の一つを嵌める。

すると枠組みの中が何も無いはずなのに揺らめき、水滴を落とした波紋のように波打つ。



『ーザ…ーザー……ーーーぇーーったーー、ーーこほん。始めまして、勇者候補に選ばれた人と、その関係者の人。私は神です』



枠組みの中に眼鏡を掛けた茶色の髪を肩まで伸ばした女性が現れた。

不思議な服を着ている。


神と言うならもっとキラキラした感じの服を着ているんじゃないかとテレンシオ少年は思っていたのだが、なんか違う。

妙にピラピラしていた。貴族が着るのに似ているような気もしないが、やはりなんか違う。

神官ご語る神のイメージとも全然違う。

これは追い出して正解だ。


しかし男は満足そうにしている所を見ると、これは間違いなく男の言う神とやらなのだろう。



『ちょっと!神が挨拶しているんだからなんか返しなさいよ!!』


「はぁ、こんちわ」



この時少年は思いもよらなかった。


まさかこの先、長いことこの神とやらに振り回されることになろうとは。

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