挙動不審

(金曜の夜、自分の部屋の側まで帰ってきた吉野)

吉野「……ん。

なんかいい匂いが……気のせいか?

ってか……家、電気ついてる……???」

(めちゃくちゃ訝しげに恐る恐る玄関を開ける)


岡崎「(ワイシャツ姿でおたまを持って顔を出す)おう。お疲れ」

吉野「…………

どうしたんだお前」

岡崎「どうしたって。

今日は珍しく残業なくてめちゃめちゃ暇だったからカレー作りにきた」


吉野「…………(目眩を起こしたように壁に手をつく)」

岡崎「……おい。大丈夫か」

吉野「大丈夫じゃねえ……

(がっと玄関を上がり岡崎の肩をがしっと掴む)マジか?マジなのか!?」

岡崎「(微妙に赤面して照れる)そっそんな別に騒ぐことじゃ……

玉ねぎと人参とジャガイモと肉切って鍋で炒めて水入れてルー溶かすだけだし」

吉野「いや、手間隙の話じゃねーから!(キッチンへ駆け込んで鍋を覗く)う あ、マジだ!! マジできてるし! めちゃめちゃ美味そーだしっっ!!

 ってか……うち、米ちゃんとあったっけ? それにカレーだけじゃあれだろ、適当なサラダくらい……って、大した材料冷蔵庫になんも入ってねーー! それに酒も足んねー……うっそやべえって……

 そうだっ俺今すぐ買い足してくるから! お前それまでここで待ってろよ、絶対帰んなよっっ!!?」


岡崎「…………

(じわじわと一層赤くなり)……やっぱ帰る」

吉野「は?なんでだよ!? ってかここで帰るとかむしろおかしーだろ!」

岡崎「いやほんとにカレー作りにきただけだから! 作ったからもう用済んだしこれで帰るからなっ、残さず食えよ!!!」



吉野岡崎『……これほど挙動不審な自分は人生で初めてかもしれない……』



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