秋雨

(土曜の午後、二人で映画を観た後)


岡崎「……ん、雨だ」

(二人、折りたたみ傘を取り出す)

吉野「お前の影響で、雨の確率の高い日はこれ持つ習慣がついたぞ」

岡崎「ほっとくと原始人並みだからなお前の生活習慣は」

吉野「(楽しげに笑う)それはさすがに酷すぎるだろー。原始人はタバコ吸わねーぞ」

岡崎「そこは威張るとこじゃないけどな。

(ぶるっと腕をさする)……ちょっと肌寒くなってきた」


吉野「……岡崎。

 俺のとこ、来るか?

 ——ここから近いし」


岡崎「————

 ん、そうだな」



(吉野の部屋)

吉野「(二人分のマグカップをテーブルへ運ぶ)とりあえずスティックコーヒーくらいしか出せないが」

岡崎「ああ、なんか身体が冷えたからむしろ有難い」


(ソファに並び、しばらく二人で窓の外の秋雨を眺める)


岡崎「——雨、本降りになってきちゃったな」



吉野「…………なあ」

岡崎「ん?」


吉野「——もう少し、側に来いよ。

 ……寒いんだろ?」



岡崎「…………」


(微妙にもじもじしつつ吉野のすぐ横に近づく)


吉野「……………………

『おお、今日はいつになく素直だ……

 これチャンスだろ、絶っっ対チャンスだろコレ……!!!

 しかしいきなりがっつくと絶対嫌がられるし……

 とっ、とにかく今はタイミングを図れ!焦らずベストタイミングを待つんだ俺っ!!』」

(膝にぐっと拳を握ってふるふると耐える)



岡崎「————……」

(こてっと頭を吉野の肩に預ける)



吉野「————!!!!???

『うおっっっ……

 ……こっこれは……!?

 もっもしかして、こいつから誘ってんのか……!!?ってかそれしかないだろこのシチュエーション!!!?

 マジか、いいのかほんとに———!!?』


 ……(そおっと肩を抱く)…………晶」



岡崎「…………すこー」


吉野「————え?

 ……おい、晶??」



岡崎「すこーーーーー」

(吉野の肩で熟睡)



吉野「……………………」





(リナのスマホに着信)

リナ「あら、順だわ。何だろ?……もしもし?」

吉野『(半泣き)リナぁ〜〜〜〜〜〜マジ助けてくれ……

今岡崎が俺の肩で熟睡中なんだけど……こういうのほんっっと初めてだからどーしたらいいかわかんねーーーー…ってか普通寝るとこかよここ!??』

リナ「…………順。そういう時はね、男はとことん地獄の苦しみに耐えるのよ。わかった?」

吉野『無理だっ!もーあちこち密着してんだって、マジ無理っっ!!!』

リナ「…………

 じゃ、やっちゃえば?」

吉野『——————ぐあーーーこの寝顔っっ…これをヤるとかまじサイテーじゃんかっっ!!!!』


リナ「……『ちょっともーおもしろすぎっ♪そして二人とも可愛すぎっっっ!(//∇//)♡♡』」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る