俺、異世界に行ったけど20分で帰ってきたって話する?

狐島

プロローグ

ほどよい暖かさが眠りへと誘う春の日のお昼ごろ、わたくし田中京介は


      「死にました」


どうしても午後の授業は眠くなるものだ。

昨日は徹夜で新作ゲームをしたからだろうか、いつも以上に耐えきれない睡魔が襲ってくる。

(ちょっとだけなら、いいよな)

先生の解説の声が少しずつ遠くなっていく。


「じゃあこの部分を、田中、説明してみろ。おい田中、聞こえてるかー」

「起きろよ京介、あてられてるぞ」

隣の席の野中が、小声で言いながら、シャープペンの先で腕をつつく。

「おい起きろってば。やばいっ!」

「パシンッ」

先生が頭を教科書で叩いた。いい音だった。

しかし、俺は目を覚まさない。

「まだ起きないのか田中。いい加減にしろ!田中?」

ここまでくるとむしろ心配され始める。

「おい京介。大丈夫か?」

野中をはじめ、周りの席の人たちまで声をかけはじめる。

「まったく、田中は寝息もたてずに寝むりおって、、寝息もたてずに、、ってまさか!」

「おい京介!目を覚ませ!」


 そうこの時、俺はすでに死んでいた。

 正確には、死んだ者が訪れるはずの「異世界」に俺はいた。


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