第8話 レベルがあがった!
魔王軍死天王オンゴ・デ・アミーゴは倒れた。
そして、それと同時に俺の頭の中でどこかで聞いたようなファンファーレが鳴り響いた。
てれれれれってってってーん!
ユウはレベルが上がった!
レベルが9になった!
筋力が99に上がった!
器用が103に上がった
敏捷が99に上がった!
知能が115に上がった!
ライトの魔法をおぼえた!
おお、レベルアップの通知が来たぞ! そうか、アイちゃんがオンゴ・デ・アミーゴを倒したから、その経験値が俺にも入ったんだな。
……なんて感心してられたのは最初のうちだけだった。
てれれれれってってってーん!
ユウはレベルが上がった!
レベルが10になった!
筋力が109に上がった!
器用が118に上がった
敏捷が111に上がった!
知能が134に上がった!
アイスの魔法をおぼえた!
てれれれれってってってーん!
ユウはレベルが上がった!
レベルが11になった!
・
・
・
……とまあ、こんな感じでレベルアップ通知が19回連続で行われて、すっかりげんなりしてしまった。うん、なんで最初は通知がマナーモードになってたのか、よーくわかったわ。あれ、神様の心配りだったんだな。
というわけで、俺のレベルは27まで上がったんだ。あと、魔王軍死天王を倒したということで、
レベルアップ通知が終わって、ようやく頭の中が落ち着いたところで状況を確認しようと周囲を見回してみると、街の入口にいた門番と同じ姿をした衛兵が、槍をかまえて俺たちを囲んでいた。そりゃそうか、いきなり襲われたとはいえ街中で戦闘したんだもんな。
ただ、その隊長らしき人とアイちゃんが既に話をしていて、隊長さんが何やら命令すると、衛兵たちは俺たちに向けていた槍の穂先を上げて待機の姿勢に変わる。ちなみに、アイちゃんはもう黒色の通常モードに戻っていた。
さらに、アイちゃんがオンゴ・デ・アミーゴの死体――というか消し炭の塊――の中を探って、何やら光る宝石のようなものを取り出すと、隊長さんに渡す。それを隊長さんが隣にいた魔術師風のローブを着た男に見せると、男は何やら呪文のようなものを唱えていたが、いきなり目を見張って何かを叫んだ。
「○○××、オンゴ・デ・アミーゴ△△」
ほかの言葉の意味はよくわからなかったけど、オンゴ・デ・アミーゴの名前だけは聞き取れた。あの宝石から、死体が魔王軍死天王のオンゴ・デ・アミーゴだと判別できたのかな。
それと同時に、隊長さんや衛兵たちの態度がガラリと変わる。畏怖と尊敬のまなざしになり、隊長さんの話し方も丁寧になったのだ。
アイちゃんが何やら交渉していたが、話がまとまったのか最後は隊長さんはじめ衛兵全員で俺たちに敬礼して去って行った。
それを見送ってから、アイちゃんが状況を説明してくれる。
「明日、この街の領主のところに呼ばれて事情を説明することになりました。今日はお疲れでしょうから、ひとまず宿で休みましょう」
「それは、オンゴ・デ・アミーゴを倒したから?」
「はい。下の方とはいえ、魔王軍の幹部を倒したのですから、説明を求められるのはやむを得ないことかと」
「あまり目立ちたくはないけど、しょうがないか。ところで、オンゴ・デ・アミーゴって死天王とか名乗ってたけど、いわゆる『ヤツは一番の小者』ポジションなのかな? あと何人いるか知ってる?」
「はい、十人のうちの下から二番目ですね」
「十人!? 今時だと『五人揃って四天王』とかも珍しくないから五~六人はいるかと思ったけど、さすがに十人って四天王にしては多くないかい?」
「ああ、それは少し違いまして、四天王ではなく十大将軍なのです。元は十一人いたのですが、一番下の死冥王が失態を犯して準将軍に降格されたので、今では十人です。いえオンゴ・デ・アミーゴを倒したので九人ですね。オンゴ・デ・アミーゴの下に死海王がいますが水棲生物であるため陸上では活動できませんので、陸で動ける中で一番下の将軍であるオンゴ・デ・アミーゴが来たのかと」
「死天王ってそっちかい! あれ、あいつ『死天王が一人』とか名乗ってなかったか? 普通、こういう言い回しは『死天王の中の一人』って意味だけど」
「単純に『死天王が一人だけいる』という意味に誤解して使ったのではないでしょうか。むしろ、なじみのない異世界の言語の割には流暢に使っていた方ではないかと」
「そういや、なんであいつ日本語使えるんだ?」
「日本からの異世界転生者が魔王軍の敵になることが多いので学ばされているのではないかと。この世界の歴代魔王のうち、日本からの転生者によって倒された魔王は結構な数に上りますので」
「そんなにいるんだ!?」
「この世界は、世界管理者の『お詫び』用に作られた世界ですので。特にゲーム的な世界で『俺Tueee!』がしたい方向けに作られております。地球のほかの国や、地球と似た異世界から来る人もいるのですが、中でも日本人が多いようですね」
「なるほどね……」
納得していると、アイちゃんが宿の建物を指さしてうながした。
「さあ、宿に入りましょう。今日は随分お疲れかと思います。お金に余裕がございますから、ロイヤルスイートにいたしましょう」
「ロイヤルスイートって最上級の部屋? ちょっと贅沢じゃない?」
「明日は領主の館に呼ばれて気疲れするかと思いますので、多少高くてもゆっくりお休みになれる方がよろしいかと思います。また、今日はこの世界での初日ですし、日本とは生活環境が大きく異なりますので、慣れるまでは日本に近い環境の方がよろしいかと思います」
そう言われて気付いた。
「そうか、普通の部屋だと環境がよくないのか」
「衛生面などで日本の水準に達しているのはスイート以上になるかと。それ以下のランクですとベッドに南京虫がいたりしますので」
「外国の安宿と同じってわけだね。わかった、ロイヤルスイートにしてもらおう」
……それに、ロイヤルスイートという響きに、何となく期待が持てそうだしね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます