雨のち曇りそんでもって晴れ
泡沫の唄
第1話 雨。
救急車のけたたましいサイレンが遠のく意識の中頭に響く。
あれ……なんで、僕は倒れかけて……事故したのは……××のはず……
つんと鼻につく薬品の匂いとともに意識が僕の体に浮かんでくる。
「んっ……」
まだ重いまぶたを薄く開くと陽の光が目に眩しく、一度閉じてしまう。
「晴希?!パパっ、ナースコール!ナースコール押して!」
「お、おう!!!」
懐かしい声が耳に届く……
「かあ……さん?」
再びまぶたを開くと、白い天井と覗き込む二つの顔が映る。
「晴希!よかった……起きたのね……!」
体を起こそうとすると、医者がやってきた。
「あぁ!そんなに急いで体を起こさないで。ゆっくり、ゆっくり」
僕の背中に手を当てゆっくりと起こしてくれた。
「四ノ宮 晴希さん、少し質問をしますね」
二、三問の質問ののち、異常はないようだと言われ立ち去った。
「母さん、僕はどうしてここに……?」
体に違和感はなく、外傷はない。病院に来る前の記憶は鳴り響くサイレンぐらいだった。
「あのね、晴希、聞いたら驚くかも知れないけれどね」
母さんは一度父さんと目を合わすと僕が病院に来る前のことを話してくれた。
同じ大学の陸という男の子が事故で亡くなったということ、その事故に居合わせた僕はショックのあまり倒れて1週間目を覚まさなかったということ。
「事故……覚えてないな……」
母さんも父さんも、この一言に驚きの表紙を見せ、再びナースコールを押した。
「事故前後の記憶と、陸さん?に関する記憶がない……?」
確かに陸という名前には聞き覚えはあるがどこで聞いたのかも思い出せなかった。
「日々を過ごす中で思い出すことでしょう、とりあえずは精密検査が終わったら、退院です。ゆっくり休んでくださいね」
両親は面会時間ギリギリまで残ったが、まだ小学生の妹の世話もあるから、家へと帰った。
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