織姫と彦星の恋
お鈴
第1夜 川を渡れない織姫
「寂しくないの?」
私の恋バナを聞いた親友は言った。
寂しい…か。確かにそれは当たってる。でも、これが私たち『恋人』の形だと思ってるからなぁ~、少なくともこっちは。あの人もちょっとは気にしてくれてるのかな。
昼休み終了5分前のチャイムが鳴って、私たちは残りの弁当を掻き込むように食べた。
私の名前は、
そんな私の数少ない友人・
その日、私たちはいつものように教室で弁当を食べていた。
「最近、どうなってるの?これ。」真美は両手でハートをつくって、左右にふりふりしながら聞いてきた。
「どうもこうもないよ、会ってないんだから。」真美の方は見ずに、着々とご飯を食べ進めながら答える。
「え、また!?」付き合ってるのに…と一人やきもきしながら真美の質問は止まらない。
「メールとかメッセージは?」「こないね」
「電話は?」「しないね」
「夏休みに遊ぶ予定は?」「花火大か…」
「それ以外で!花火は毎年恒例行事でしょ!」
「ないね」
ひえ~!真美がわざとらしく驚く。
「…琴音はそれでいいの?」
「いいって?」
「彼氏と会わなくて!恋人同士でしょ?」
まぁ、そうだけど…
「寂しくないの?」
「…これが私たちだからね。」
そう言った私の顔はいつも通りに笑えていただろうか。
はぁ
無駄だと思ったのか、私の心の内を読んだのか、真美はそれ以上何も言わなかった。
そう、私には恋人がいる。名前は、
そんな彼だが、ここ2カ月連絡をとっていない。別に音信不通ってわけじゃない。とろうと思えばとれるはず。ただ、お互いまめに連絡するようなタイプじゃないから、いつも用事がない限りあまり自分からメールやメッセージを送ったり、ましてや電話をかけたりしないのだ。
まるで私たちは七夕の織姫と彦星のようだ、とふいに思う。付き合って5年、想いは同じはずなのに、天の川という名の何かが二人を隔てていて、会えるのは誕生日、花火大会、クリスマス、バレンタインなど、行事があるときのみ。
でも、きっとそれは、私の勇気のなさが造り出した
そうして過ごしていくうちに、いつの間にか私たちの間には月日という名の星達がとめどなく流れてしまっていた。
別に嫌いになったとか、そういうことじゃない。毎夜毎夜、寝る前に彼のことを考えるし、そしたら夜中でも無性に会いたくなって外に飛び出したくなるし、友達の恋バナを聞く度に本当に心底会いたくなる。
年に何回か、行事のある時に会う。こんな形も私たちらしいなって自分でも思ってる。でも、寂しい気持ちも、会いたいって気持ちも私の本心だと思うから、どうしていいのか分からなくなる。ただ、大好きな彼に「会いたい」と、そう言う勇気がないだけなのに。
こうしている間にも彼は私を忘れているかもしれない。もう好きじゃないかもしれない。長い付き合いで別れられないのかもしれない。そんな暗い想像で頭の中が闇に包まれていく。私の心はもうぐちゃぐちゃだ。いろんな感情が入り交じってどれが本当の自分か分からない。
終わりのない迷路を一人、さ迷っている感じがした。
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