2つの陽だまりの笑顔
きたばぁ
第1話 2つの陽だまりの笑顔
青い空が美しく輝き、太陽が照りつける8月、私は生まれた。
私の母はお花が大好きで8月に生まれた私に
そんな仲良しな父と母、そして私、向日葵のお話し。
私がまだ小学校の頃です。私の家には昔から母の好きな花がたくさん咲いていました。いつも母は私に花の名前や花言葉を毎日のように教えてくれ、父は母の事を思いいつもそばに寄り添っていました。そんな家族にはひとつ気掛かりな事がありました。それは母のことです。母は生まれつき体が弱く、すぐに体調を崩しては長続きするのでいつも私は母の事が心配でなりませんでした。
「向日葵がお母さんの体をよくして、いつも元気にすごせるようにする。」
母が体調を崩した時によく口癖のように励ましていたと父は言っていました。
小学校での生活も佳境に差し掛かろうとしていた頃でした。相変わらず、母は体調を崩すことが多く、この時期では入院することがよくありました。私の家は都会から離れていたこともあり病院がなく、いつも父は苦労したと言っていました。
そのような事が多々起きていた、とある夏休みのことです。母も元気になり、皆である花畑に行くことになりました。私は楽しみでしかたなく、前日も眠ることができませんでした。
その時はまだ何が起こるか知るよしもなかったのです。
ようやく、楽しみにしていた日がやってきました。車で約10分走ったところで道端に色々な花が咲いているのを見つけました。そこには私の名前でもあるヒマワリも元気に育っていることも見受けられました。やっと現地に着きました。なぜか着くまでの約10分間が何時間にも感じたのは初めてのことでした。
しかし、そんな思いが一瞬で吹っ飛ぶような光景が目の前には広がっていたのです。
先ほど道端に咲いていたヒマワリとは違い野原一面にヒマワリが咲き乱れ、中央には堂々と伸びた一本の大木が立っていました。
「すごい...」私はこの一言しか出ませんでした。その時です。
「ゴホッ、ゴホッゴホ」
私がいきなり咳き込んだと教えてくれました。しかし、私にはこの瞬間の出来事が記憶にありません...
食べ物を食べて喉をつまらせたわけでもなく、ましてや喘息ぜんそくとも考えられませんでした。
数時間後、私が気づいた時にはベットの上でした。両親が言うには、この様な症状は今まで見たことがないとのことでした。確かに母親に似たのか、風邪をひいたときなどは治りが悪いことが何度かあったものの咳き込んでたおれたことなどはなかったらしいです。
この症状がなにかわからないまま回復を待ちました。しかし、医者が言うには夏の暑さで疲労、夏バテだろうとの診断でした。
数日後の出来事です。私の症状がひどくなったらしく、まるで母が風邪をひいた後の症状によく似ているような...
両親はその時、悲しみのあまり涙がこぼれ落ちたと言っていました。
「なんで、お母さんたち、泣いているの?向日葵ね、全然しんどくなんかないよ。」
この時の声はしわしわで一瞬で老いたかのようなもので、でも心の底から親を安心させようと必死な姿がひしひしと感じさせるようなものだったと言っていました。
「そうだね。お母さんたちが泣いていたらダメだね...向日葵もお母さんを元気にしてあげるっていつも言ってくれるもんね。」
母は涙を拭いながら言ってくれたのを覚えています。
風邪が治り、1ヶ月が経とうとした頃、また大きな出来事が起ころうとしていました。それは私がちょうど6年生になろうとしていた頃でした。私が学校に帰るといきなり母が話しかけてきました。
「大事な話があるの。だからよく聞いてね。お母さんにね、赤ちゃんができたの。」
「お母さん、赤ちゃん産むの?」
私は言い返しました。確かにとてもうれしかったのですが、赤ちゃんのことより母の体の心配をしました。
さすがにお母さんもびっくりしたと言っていました。しかし、冷静な母は怒るような様子を見せることなく、自信満々に答えました。
「お母さん、頑張って赤ちゃんを産んで立派に育ててみせるよ。向日葵も同じだよ。このおなかの中の赤ちゃんと一緒に今よりももっと立派になるんだよ。」
私はこの母の凛々しい姿と覚悟、そしてこれが最後の言葉だと言わんばかりの言葉は今も忘れられません。
それから数ヶ月が経とうとしていました。母はたびたび調子を崩しました。そして父は、病院であることを言われたのです。
「お母様の体力が持たないかと思われます。このままだと高い確率で出産時にお母さんの命が...」
この言葉に付き添っていた父は呆然ぼうぜんとなったと言っていました。
「このまま、出産するかあきらめるか家族と相談してください。」
こんな出来事が起きているのも知らない私は母に赤ちゃんの事を聞かされて、あきらめるという選択肢はありませんでした。しかし、赤ちゃんを産むのに反対していた父は私と毎日、言い争っていたのを覚えています。
「このままだとお母さんが危ないんだぞ。」
父は強気で言っていましたが私はそんなことはずべて無視して言い返しました。
「赤ちゃん欲しい!お母さんと約束したんだから!」と初めて父に母が前に赤ちゃんと立派に育ってねという母の願いを言いました。
すると父は冷静になり
「そうだったのか...わかったよ... なんであんなにお母さんが強気だったのか訳が付いたよ。みんなで頑張ろうね。」
少しは悩んだもののすぐに納得してくれました。私はその時、ホッと溜め息を漏らしながら決心しました。「どんな悲しい結果が待っていても、無事に赤ちゃんを産んでと。そしてお母さんも私と同じことを思ってくれているはずだから。」と...
しかし、事はうまく進むところかどんどん悪化するのでした。最悪のタイミングでまた母が体調を崩したのです。さらに問題が、ちょうど赤ちゃんが順調に育って出産が近くなっていたころでした。母は入院していてたびたび母の顔を見るだけでしたが、体調が悪いはずなのに笑顔で接してくれる母の姿はどこか懐かしく、どこか切なくも感じることができました。
そして出産が、母の体の調子が戻ろうとしているころ、いまかいまかと待っている時でした。
手術室から大きくて元気な泣き声が響いてきました。でも、喜ばしい出来事が起こったはずがどこか静まり返った雰囲気が漂っていました。それと同時に付き添っていた父が出てきました。すると、頭から足のつま先までの力が全部抜けてしまったかのような表情をして
「赤ちゃんは無事に生まれたけど...お母さんが...お母さんが...」
といっていつもは冷静な父が泣きながら頭を抱え込んでいました。
私はその光景を目にして何も言わずに母が一命をとりとめるようにと願う事しかできませんでした。
そして数分後、担当医師が赤ちゃんを抱えた看護師さんと一緒に出てきました。赤ちゃんを父が抱っこすると医師がそれを見計らって首を横に振りました。私と父はその姿をみて、産まれたての赤ちゃんより大きな声で泣きじゃくりました。それを横目に看護師さんが「お母さんがもしも亡くなってしまった時に渡して欲しいと・・・」
母からの手紙を看護師さんから受け取り、父は私に見せながら読み始めました。
お父さん、そして向日葵へ
『この手紙を見ているという事はもうお母さんはまた笑顔で皆を向かい入れる事は出来なくなっているでしょう。だってもうここにはいなくなっているから・・・それでねお母さん、今までの事を振り返ったんだよ。いままで楽しかったことがたくさんあったねってもう涙が出てきてたいへんだったよ。それでねもし、赤ちゃんが無事に産まれたらお母さん、つけたかった名前があるの。たぶん男の子が産まれるから名前は棗なつめ、10月が旬で花言葉は健康、とてもいいと思うの。最後に向日葵へお父さんはたぶん、今は悲しくてたおれそうになっていると思うけど、お父さんと一緒に赤ちゃんをよろしくね。ではさようなら』
という内容でした。私が泣いている横で父は言いました。
「棗、今から君は僕たちの家族だからね。一緒に楽しんでいこうね。」
この時の父はどこか男らしく格好よかったのを覚えています。
数年後...桜の花びらが散る頃、私の家では元気な2つとそれをあわてて止める1つの声がありました。
「棗、今日は学校だよ。はやく一緒に行こう!」
「待って、お姉ちゃん。」
華やかな高い声とそれに続き、幼いかわいらしい男の子の声が飛び交う中
「向日葵、忘れ物は?」と優しい男の声が響いています。
「向日葵!」
「今度は何?」
「今週の休み、いいところに連れて行ってあげるよ」
「やった~」
このような楽しい会話が朝から響きあうこの家族には1つの問題があります。それは母親が弟が産むときに亡くなってしまったことです。でも今は平気。だって弟と父の仲良し家族がいるんだもん。
「今週の休みのためにがんばるぞ~棗、早く行こう~」
「お姉ちゃん、早く~!」
そして約束の休みの日、父は私と棗を連れてある花畑に連れて行ってくれました。その花畑は野原一面にヒマワリが咲いていてその中央には堂々と伸びた一本の大木が...
私は久しぶりに目にした光景に涙を浮かべました。ここは初めて両親と遠出とおでしたところです。
「お姉ちゃん、なんで泣いているの?こんなにもきれいなのに。」
そこには1つの笑顔が
「そうだね。なんで泣いているんだろうね。こんなにきれいなのに。」
こういうとどんな苦しい事があっても、乗り越えていくと決心し、その笑顔に負けんばかりのもう1つの笑顔が生まれ
2つの陽だまりの笑顔になりました。
2つの陽だまりの笑顔 きたばぁ @1115
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