児童保護人
幻想鉄路局
心に傷を負った子供─1─
僕が務める児童保護所に新しい子が来た。
彼の名前は宗太郎と言い、両親が交通事故で亡くなった後親戚の家に預けれていたらしい。最初は可愛がられていたが、その両親の間に実の子供が生まれてから彼の生活は大きく変わったらしい。実の子との差が大きく表れるようになり、衣食住の待遇は酷くなったらしい。
それもそのはず、実の子と養子では差が出てもおかしくない。何時からだとは具体的には言及は避けるが、とある世代の人々からこの事をする親が増えてきた。幼少期に適切な教育を受けておらず、知ろうともしないから問題である。
実際問題、この世代の両親の間に育てられている子供は他の子どに比べて感情が薄く、また人間性も怪しい。
その様な事からこう言った子供がいる事が把握しずらくなっているの現状である。
この子も同様である。
自分から何も言わなかったらしいが、近隣の大人や学校の教師から見れば一木曜全だったらしい。
去年に児童相談所に学校から通報があってからこの子についての調査が行われた。
その結果が先日出て、この子は保護されることになった。
そういう事で学校からそのままここ生きている訳であるが・・・。
「えっと何で、後ろに隠れているのかな?」
先生の後ろで隠れながらこっちを見ているのが現状であった。
どうやら、この子の心の傷は僕が思った以上に深いしい。一定以上の傷を心に負った子供は人間恐怖症になるらしいが、どうやらこの子もそうらしい。
「すみませんね。この子まだ怖いみたいで」
この子を連れてきた学校のカウンセラーがそうつぶやく。
「いいんですよ、みんなそうなんですから」
隠れている宗太郎見ながら答える。
しかし、ここまで酷いとなると正直、完全に癒せるか怪しい。
「取り合えず、この子がどう言う事を受けていたのか、私の方でも記録しているのでそれでも見ながら今後について話しておきたいのですが」
そう言って横に置いているカバンから大きな書類の束を取り出す。
多分、この子が学校に入ってからずっと記録しているのであろう。量は別として今後に役立つと良いんだが。
「あの子は3年生までは他の子どもと変わらない様子だったんですよね。
変わったのは、4年生になってからで、他の子との差が大きく出てくるようになってきたんですよね。なんでか分りませんが宗太郎君の給食費だけ払われなくなったりとか、学習道具が新しく買われることが無かったり、校外学習や教材費の集金も払われないし、その挙句学校に来る機会が一気に減って、それで可笑しいと思ってご両親に尋ねたらいじめで学校に行かなくなってそれで払う必要もなくなったからって答えてんですよ。
でも、この子の異変が起きた後なんですよね、いじめられるようになったのは。その事をご両親に尋ねると学校内ではなく、外でと言う返答があったんです。これについては深く調べることが出来なかったのでその当時はそうだと思っていたのです。
5年生になってからですね、地域の人からの通報が多くなってい来たのは。何でも日中にこの子を見かけるのが多くなったとか。それで良かったと思ってこの子の家を訪ねたら、あの子には会えないって言われて、それでおかしいと思って児童相談所に報告したらこうだって分かって。
今日、やっと学校に来たのでそのまま連れてきたというわけです」
成るほど、大体状況は理解できた。
報告書にある家庭内の扱いの差の他学校に対してもあったのか。
「了解しました。取り合えず様子を見て変わったことがあればご連絡します」
そう言って承諾印を令状と親権停止書にに押す。
この瞬間をもってこの子の親は親ではなくなる。
「それでは、よろしくお願いします」
最近このよう子が増えてきている。
原因は言わずもがなあれであろう。
問題が起きてから対処する。昔の政府はそうであった。あの法律ができるまで。
[公安維持法]
こいつができてから大きく変わった。問題は起きる前に対処する。
報道規制…真実を伝えず間違った報道を報道の自由をもとに伝えていた報道機関を大きく変えた。実際起きていることを隠さず曲げずそのまま伝えることをもとにしたものである。方法も規制された。被害者のことを考えずにただただ報道するのではなく、被害者に寄り添ってそこから見えてきた真実を報道する。
例えば災害があったとき、そのまま取材したものを報道するのではなく被害者を支援し、そこから見えてきたものを報道する。
一見関係無いかのように見えるがよくよく見てみれば、報道の違いによって間違った真実が報道されそれにより問題が発生るのを防ぐためである。
それ以外にも言動の自由にもその内容に責任が発生するようになった。
そんな中でも最近出来たのが代理児童保護である。
先年に起きた秋葉原での無差別殺傷事件。あれが大きな原因となった。
人とのかかわりを大きく絶ち、人間性をまともに育てず感情も生半可な状態で放置され、周りの環境に交えずそのストレスから起こされた事件であると判断された。
公安維持法の一番の目的である犯罪行為の予防を実行するために設けられた多くの新制度は多くの混乱の原因になると同時に確実に機能していた。
今すぐを変えるのではなく今と未来を変える。
ある人物が世間にはなった言葉は多く変え、よりよくした。
しかし、すぐに変わることはない。
間違った情報で埋め尽くされている世間でどうやって真実を残すか。
それが、今、僕たちに課せられている問題である。
両親の偽りの証言、それをもとに真実を偽りに変え、偽りを真実に変える世間と戦いながらこの子を守もなければならない。
それが、今僕のすべき事である。
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