第75話

「この力は、授かりもの。

 穴あけのメロディの力だ」


 ジャキが答える。


 メロディの力は、複数人で聞いた場合。

 稀に複数人に能力が授かることがある。

 人々はそれを共鳴と呼んだ。


「ジャキくんは、僕のことを知っているのかい?」


「ああ、お前の親を殺したのは俺の父親だ」


「そっか」


 セロはため息を吐く。

 ジャキに当たっても仕方がない。

 そう思っていた。


「俺はお前に謝らなければならない」


「君と父親のことは関係ないだろう?」


 セロは、自分にもそう言い聞かせた。


「違う。

 俺はお前の記憶に穴を開けた」


「記憶に穴?」


「穴あけのメロディは記憶も操作する。

 いわゆる思い込みの力なんだ」


「んー、よくわからないな。

 暗示の力で胸に穴が開くの?」


「俺は複数の能力を持っている。

 記憶操作のメロディと穴あけのメロディ」


「複数の能力者か、それも珍しいね」


「ああ。だが……」


 ジャキがジルの方を見る。


 ジルが唸りながら起き上がる。


「え?胸に穴が空いているのに?」


 セロが驚く。


「とりあえず俺が死ぬ前に記憶を返す」


 ジャキがそういってセロの胸を触った。


「あ……」


 セロの頭にいろんな記憶が甦る。

 そして、全てを思い出した。

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