第39話

 はじめてセロがオトネと出逢ったのは、今から10年前。

 セロとオトネが、6歳のときだった。


「さぁ、オトネ。

 この御方が――様だ」


 オトネの父親である執事がそういうとオトネがいう。


「……この人が新しいご主人さまなのですますね」


 オトネの言葉に執事が頷く。


「ああ、そうだ。

 お前は今日からこの御方に忠誠を誓うのだ」


「キスすればいいのですますか?」


 オトネのおとぼけに執事が首を横に振る。


「キスはしなくてもいいんだよ。

 オトネは、この方とどんなときも一緒にいるだけでいいんだ。

 この先もずっとお前が護るんだ」


「わかりましたですの!」


 執事の言葉にオトネがニッコリと笑う。


「よ、よろしく」


 セロは、小さく照れる。


「はい!よろしくですの!」


 オトネの笑みにセロは照れる。


「う、うん」


「ずっと一緒なんですますよ?」


 オトネの言葉にセロの胸がときめく。


 ――ずっと一緒って言ったじゃないか!


 セロが、ゆっくりと目を覚ます。


 見知らぬ白い天井。

 見知らぬ白い壁。


「目が冷めたようですね」


 そして、黒い服を来た男がひとり。


「貴方は?

 ……いや、この感じ人間じゃないのか?」


 セロがそういうと黒い服を来た男が小さくうなずく。


「あ、わかりますか?

 私の名前はキサラギ。

 一応、神族です」


 男はそう言って自己紹介した。

 男の名前はキサラギ。

 神族。

 自分との力の差は見た瞬間わかった。

 暖かくも冷たくもあるこの感覚。

 セロは、神族とあったことがある。

 なのでわかった。

 この人には逆らえない。

 清空もまた神族だ。

 だからか「神族にもいい存在がいる」と思っていた。

 目の前もまたいい存在なのだろう。

 セロはそう思った。


「僕の名前は……」


 セロが、そういうとキサラギがニッコリと微笑む。


「セロさんですよね?」


「はい」


「新一や裕也がお世話になりました」


 キサラギがそういうとセロは気づく。


「ってことは、貴方もですますスイッチの?」


「そうです。

 私はですますスイッチのキサラギですよ」


「そうか……

 オトネがこの場にいると喜ぶだろうな」


「そうなのですか?」


「はい、貴方たちですますスイッチの大ファンなんですよアイツ」


「そうなのですか。

 それはありがたいことです」


「はい」


「んー」


 キサラギは、そう言ってセロの方を向いた。

 キサラギの目は閉じている。

 しかし、見られている。

 そんな感覚はあった。


「いや、ここは。

 『そうだ!オトネは!オトネはどこにいった!?』って騒ぐのがパターンかな?って思ったのですが。

 意外と冷静ですね」


「そうですね。

 なんか落ち着いています」


 セロの心はどこか穏やかだった。

 なぜならキサラギが神族だからである。

 心が暖かくなる。

 おそらく清空と同等かそれ以上の力を秘めている。

 力が強ければ強いほど暖かい気持ちになれる。

 それが神族の性質なのだ。


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