第1話 錆色の空の下

空が錆びている。



きっと明日も明後日も明々後日も同じ色をしてるんだと思う。


この


血と泥と煙の渦巻く様な臭いが鼻元を掠めていく感覚を俺は何度も体感している。


きっとまた喧騒でもあったのだろう。蒸せ返るような臭いの中に熱を感じる。放火もあったのか。


「あの男どこ行きやがった!!俺の荷物ひったくりやがって!!」


俺の背もたれている壁の向こう側から怒鳴るような男の声が響いた。

あの男とはきっと俺の事だ。俺が荷物を盗ったんだ。


暫くして走りだす足音が聞こえ、その足音は徐々に遠ざかっていき、やがて耳が痛くなるほどの静けさだけが残った。


「‥‥ふぅ」


俺は胸に抱えていた荷物を血を吸って血泥となっている地面にドサッ!と放った。


この国は48個の”ブロック”という地域からなるそれは大きな国だ。

ブロックごとに治安の良し悪しがあり、数字が大きくなるにつれ治安が悪くなる。


俺のいるこのブロックは第46ブロック。”放浪の民”の名を持つブロックだ。


治安が悪いという事は貧しいという事であり、この”放浪の民”では盗みや喧嘩は勿論、殺しだって頻繁にある。


そんな毎日がずっと続いていると、どんな明るい瞳を持った人間でも徐々にその瞳は霞んでいき、血走る者、二度と明かりの灯らない瞳で生きていく者、、


そういう奴らが最終的に行き着く行為は、、いや、これ以上はやめておこう。


「少しは休めたな、、よし、行くかっ!」


俺、九条ソーマは荷物を背負って壁伝いに周囲の気配を注意しながら少しずつ歩を進め始めた。


自慢の綺麗な空色の髪の毛は泥で薄汚れてしまっている。あぁ、、何日水浴びしてないっけ?と自分の腕を嗅いでみる。

よく見れば服ももうボロボロだ。いたる所が破けている。


「また盗むか」


自分の事を何回も惨めだと感じた。でも、ここでずっと暮らして行くうちに、、何というか、別の感情が、気持ちが、生まれて来るのを感じていた。それが何なのかよく分からないけれど


それは多分きっと



「絶対に生き抜いてやる」




こういう事なんだと思う。



第1話 錆色の空の下 ~end~



次回予告。


「お帰りなさいソーマ。遅かったですね」


「何を見ているの?」


いくら生きていく為のスキルだとしても、盗みは立派な犯罪だ。


次回 第2話 招待状

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