地球のみんな!オラに応援をわけてくれ!!

ちびまるフォイ

世界の命運は応援ボタンにかかった……!

「みんな! オラに応援をわけてくれ!!!」


男は天に向かって手をかざした。


「ホホホホ。それはなんのつもりですか? お手上げということですかね?」


「今に見てろ。おめぇなんかぶっ飛ばせる元き……"応援玉"をぶつけてやる」


「面白い。では待ってあげましょう」


敵は余裕しゃくしゃくで男の最終奥義を見守る。

けれど、男のかざした手のひらにはまるで応援パワーが貯まらない。


「くそっ! いったいどういうことだってばよ!!」


「キャラまざってるまざってる!」


「なんでだ! なんでみんな作品の応援ボタンを押してくれねぇんだ!

 地球がどうなってもいいのか! ツイッター炎上させるぞこの野郎!」


「どうやら、必殺技も出せないようですね。では地球もろとも死んでもらいましょう」


こんな冒頭でやられていいはずがない。


「いったいどうして応援で力を分けてくれねぇんだ……! 損するわけでもないのに!」


「ホホホ。なにも書いてないのに応援なんてするわけないでしょう」


「そ、それだ!」


敵からの意見で男はぴんときた。

ここはカクヨム星。いきなり応援してくれと頼まれても評価するだけの内容がない。

ちゃんと小説としての体裁を整えなくては。


「こないだ、銀行にいってきたんだ」


「どうした急に」


「銀行にいって窓口でお金をおろせなかったんだ。

 なんでだと思う?」


男が急に始めた小話に敵はぽかんとしている。


「それは僕が客じゃなくて店員だったからね! HAHAHAHAHA!」


「…………」


「さぁ! 小話をいれたぞ! 応援できるだけの内容はあるはずだ!

 地球のみんな! オラに応援をわけてくれ!!」


応援ボタンが押されないのは、応援されるだけの内容がまだないから。

そう思った男は小話を入れて評価されやすい状況を作った。


……が、ここまでお膳立てしてもめっきり応援されない。



「なんでだ! オチがわかりにくかったからか!?

 店員だったから、えと、窓口で客の対応するだろう?

 客にお金をおろしてって言ってもムダだって意味で――」


「いやそういうことじゃないと思いますよ……」


敵はもうこいつぶっ殺そうかなと思い始めていた。

別にさっきの話が超絶つまらないこととは関係なく。


「しょうがねぇ、こうなったら神様から教わった技を使うしかねぇ」


「なっ……なんだと!?」


「いーーー……」


男の手は妙な動きをはじめる。


「せーー……」


「キサマ! なにをする気だ!」



「かーー……」



「いーーーーー!!!!」



男はこの小説のタグとジャンルを「異世界ファンタジー」へと切り替えた。


「みんな大好き異世界ファンタジーに変えたぞ!

 地球のみんな! オラに応援をわけてくれ!!」



 ・

 ・

 ・


しばらくたっても、いっこうに応援パワーはたまらなかった。


「そんな……! まるで応援されない……! 地球がどうなってもいいのかこのヤロー!」


「クックク。ホーッホッホッホ」


「てめぇ! なにがおかしいんだ!」


「あなた、利用規約は読んでないんですか?」


敵は利用規約の一節を男の前で披露した。


「応援を依頼したりする内容は禁止されています。

 だからいくらまっても応援なんてたまらないんですよ」


「そんな……オラが間違っていたのか……!」


「悪いことをしようとしている人間を応援する人なんていないんですよ。

 茶番は終わりです。この星もろとも消してあげましょう」



「まだだ……まだ方法は残ってる!!」



「ホホホ。いまさら小説のキャッチフレーズを書き換えてなんになるんです?

 こんな小説を応援する人なんてもう誰もいないんですよ」


敵が星を消す一撃を放とうとしたまさにそのとき。

地球からぐんぐんと応援の力が男のもとに集約されていく。


「なんだ!? いったいなにが起きている!?

 ものすごい数の読者が!!」


小説のキャッチフレーズには

"53万PV突破!!"と書かれていた。


「こいつ! 閲覧数を水増しして、さも人気小説だと思わせやがったのか!!」


「みんなサンキュー!」


人気小説だという先入観ありきで読者がやってくるため、

応援ボタンへの敷居もぐっと低くなる。

みるみる男のかざした手のひらの先には応援エネルギーがたまる。



「これで、終わりだァァァァァア!!!」



太陽ほどの大きさになった応援玉を男は放った。

強烈なエネルギーに敵は飲み込まれていった。




強烈な光が収まるころには、敵は瀕死の状態で倒れていた。


「こんな……こんな下等生物に私がやられるなんて……これ以上の恥はない……」


男は歩けるだけの力を敵に与えて回復させた。


「キサマ……どういうつもりだ! 情けを与えたつもりか!!」


敵はやっとの思いでよろよろと立ち上がる。

男はにこりと笑って次の星を指さした。


「さぁ次行ってみよう」


「え?」


瀕死の敵をかついで男はまた別の世界へ向かった。

そして、いつものように手をかざして地球のみんなに呼びかけた。



「地球のみんな! オラにちょっとばかし応援をわけてくれ!!」

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