底辺

碧い紅葉

乾いた日の雨



どうしてだろう。

何かを書こうと思った。

外は風が強く、ひどく乾いている。


毎日が過ぎるのをただ待っている。

生きているのは確かだけれど、

貴重な筈の時間をただ浪費している。

風がやめば雨が降る。

約二ヶ月ぶりの雨。


ここに来た頃は

私は希望に満ちていた。

未来に期待して

そうして何かが変わると信じていた。

何も変わらなかった。

私は何も変わらなかった。


変わろうと思った。

だからこうして書き始めた。

昔は作家になりたかったから

またあの時のように

原稿用紙に没頭できるかもしれないと。

しかし、作家になるには

私には根気がなさ過ぎた。

いや、私は何をするにも不向き過ぎた。


この字の羅列に、

誰か名前をつけてくれるだろうか。

これは詩である。

散文である。

それとも随筆である。

そう主張しても良いものか。

誰かこれを買って欲しい。

そうでなければ

私は飢え死にしてしまう。

私はまるで

生まれたばかりの赤ん坊のように

泣く以外に何もできないのだから。


自分のことを語るのは好きだ。

いつも誰かに自分を

理解して欲しいと願っているから。

しかし誰かに自分のことを語る度、

私は小さく絶望する。

私は独りであり、

誰も私を見えていないのだと

知っていた筈なのに

思い知らされてしまう。


人間というものは、私に限らず、

皆一生孤独なのだろうと思う。

一人ではないと盲信するには

私達は賢過ぎた。

未来に期待し続けられる程、

動物ではないのだ。


かと言って、

悩み続けていられる程賢くもない。

そんな賢い人たちは

もうとっくの昔に死んでしまった。

こうして死に切れない者は、

一生動物と人間の間で苦しむのだ。


雨が降った。

また明日には日照りだろうが、

とにかく今日は雨が降った。

私は水の溢れる国からやってきたから

よくわからないのだけれど、

こっちの人たちはいつも

水がないと嘆いている。

そのくせ雨が降ると嫌な顔をする。


雨が降ると蝸牛が出てきて、

ここも私の国と同じ法則の元で

動いている土地だと気づかされる。

何も変わったことはない。

私も変わらない。

つまらないくらい、何も。

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