2 はじまり2
時計の時刻は8時手前を差す頃。
「そろそろ、か」
初めて自分の仲間となる人達に対面するのだ。
なんか、少し緊張してきたな。
予めフリルに聞いていた場所に行く。
「仮部屋から対面会場って結構近いんだな。」
なにせ仮部屋から大体斜めといった所にあったのだ。
―ガチャッ
扉を開くと、そこには選抜者用の席が3席とフリルの席。
そして、先輩に価する冒険者の席が2席。
そこにはすでに俺以外の全員が揃っていて。
「おっ!来た来たっ!」
先輩と思わしき剣士風の少女が呟いた。
「おっ、噂のハーレム!ハヅキくんですかー?!」
もう一人の先輩と思われる明るい雰囲気の少女はそんなことを言う。
なぜその少女がハーレムなどと言ったのか。
―それはすぐに分かった。
パッと見た感じ、職員含めて女しかいない。
職員といってもフリルしかいないのだが。
「お待ちしていました。葉月くんの席はこちらです。」
フリルによって、俺は席へ案内される。
「なぁフリル、配属先間違ってないか?女しかいないじゃないか。」
そう小声で聞いてみる。
「間違っていませんよ。葉月くんは“可愛い系男子”なので問題ありません!」
同じく小声で、そして笑顔で返事が来た。可愛い。
「えっ」
いやちょっと待て、可愛い系男子ってどういう事だ。
後で詳しく聞こうと心に決め、案内された席に着く。
前の二席、先輩と思わしき少女たち。
赤目に茶髪、ハーフアップをしたスタイル抜群の剣士風の少女。もう一人は蒼目銀髪に肩くらいの長さの髪を揺らしている人より成長していない幼気な少女。
両隣には選抜メンバーと思わしき二人の少女。右の子は蒼目で長い薄い桃髪をおろしてる。そして体格や姿勢の美しい様子。その姿はまるで貴族のようだった。
…あとで聞いてみよう。
左の子は蒼目金髪のポニーテールかぁ。スッとした顔立ちにウインドブレーカーを着てるところ、運動能力は高そうに見える。
「ではでは〜!全員揃いましたので!」
―考察をしていたら何かが始まる様子の声。
「まずは自己紹介をしましょう。」
職員であるフリルにより、対面会兼職業決めが開幕となった ―
「やっぱここは先輩であるあたしらからってもんだよな!」
割と頼りになりそうな剣士風の先輩だ。
フリルがよろしくお願いします、と。自己紹介が始まった。
「あたしの名前は…」
「『柘榴』〜!」
「ちょ、サファイアそれ言うなっ!あたしの名前はガーネット!」
“サファイア”と呼ばれた少女はイタズラ成功とばかりにニカッと笑っている。
ガーネットは少し頬を赤らめ恥ずかしそうに、他の皆も微笑ましそうにガーネットを見ている。
そうしてガーネットと名乗った少女の自己紹介は続く。「職業は大双剣使い。得意技はトルネード!明日のゴブリン狩りの時に魅せてあげようじゃないか。」
「私はサファイア。」
ガーネットの自己紹介が終わったと思いきや、張り合うようにサファイアが自身を名乗る。
次の瞬間、彼女の周りが白や青、水色といった小さな光たちによって照らされる。
「見ての通り、大精霊使いよ。この子達、いざという時にはきっと助けてくれるはずよ。」
サファイアの自己紹介が終わると、淡い微精霊たちの光は消えた。
フリルによって、その後の進行は進められた。
「全員の自己紹介をしてますと時間が足りなくなってしまうので申し訳ないのですが省略させて頂きます。一番右側に座ってらっしゃるのがフルール・フレアさん。続いて真ん中が草間葉月くん。左側がアリシア・アクアマリンさんです。」
俺ら3人はお互いみあってよろしく、よろしくと挨拶を交した。
「友達にはアリスってよばれてるから、ハヅキくんもそう呼んでくれると嬉しいなっ!」
そうアリシアにふっと耳打ちされた。
では、とフリルが進行を続ける。
「あなた方3人はこの度、対魔黒軍の精鋭パーティーの2期生としてこの2人と合わせて5人でパーティーを組んで貰います。」
「「「おぉー!」」」
やっとそれっぽい雰囲気になってきて俺ら3人、テンションが上がってきました。
「精鋭パーティーですから上級職に就く権利があります。魔法使いとヴァンパイアは中級からですが…。その他の職は上級職から就くのが可能です!…事前にパンフレットを渡したと思うのですが…気になる職業…ありましたか?」
チラっチラっと、フリルが何か言えよとばかりにこっちをみてくる。
「俺は、絶対にヴァンパイア。」
「質問はありますか?」
無視かーーーーい!!!
心の中でそう叫んだ。
まぁ、ボソッといったから聞こえなかったかもしれない。
開き直ると俺は挙手した。どうしても聞きたいことがあったのだ。
「あーー、はい。普通倒すのは魔王軍じゃないのか?なんだよ魔黒軍って。」
「魔王軍はとっくの昔に葬りさられたのです。」
「「「えっ」」」
2期生である俺らは揃って声を上げた。
先輩二人は既に知っているとのようで、フリルの話には頷いていた。
「魔王とその幹部が全滅し、その生き残りが『魔王軍なんてよくある名前やめて、もっと黒そうな魔黒軍に変えちゃおうぜ』っていったことから…」
「新たな敵軍『魔黒軍』が生まれたのだ。」
フッといいとこ取りするかのようにガーネットが割り込んだ。少し気分が良さそうだ。
フリルといえば決め台詞取られたとばかりに薄く頬を赤らめ、息で右のほっぺたを膨らませていた。
―ガチャッ
扉が開く音がしてその場にいた全員がそちらを向いた。
扉の側に立っていたのは男性職員でどうやら事務連絡で俺達に知らせに来たようだった。
「実はもう一人、フリーで活動しているコがいてね。コユキちゃんっていう15歳の女のコでさ。地元を拠点にしてたみたいでね。地元がこのギルドから遠くて今向かってる途中みたいだから数日後には合流出来るんじゃないかな!ま、彼女とも仲良くしてあげてね!そいじゃー。」
それだけ言って彼はその場をあとにした。
「フリル、さっき5人でって言ってなかった?もう一人いるらしいじゃないか。」
「…言うの、忘れてましたっ。」
反省はしてない感じで俺の方を見て、てへっと笑って誤魔化すフリル。
あとでさっきの男性職員に聞いたところ、やはりフリルのことだし言い忘れてるんじゃないかと思い代わりに“コユキちゃん”の事を言いに来たそうだ。
フリルの間抜けグセは、治らないものか。
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