第40話*六人*
「ほらほら、届いたよ」
六人となり狭くなった部室で、里見先生から受け取ったばかりの落花生の種が入った箱を開けて見せた。
「部長、中の袋に
李華が言うように、中に入っている袋には宛名書きがありそう書いてある。落花生を育てている知り合いから届いたものを、パパさんはそのまま箱に入れたのだろう。
「いっつもパパさんって言ってたから、名前知らなかったな」
「おいしそうですね。このまま食べられるんでしょうか?」
「小袖、食べるなよ。それより優菜さんのところから苗も届いているはずだから、四人で用務員さんのところへ行って受け取ってきてよ」
素直に取りに行く四人を見送る。
「真空、こうして二人で待ってるだけでいい時がくるなんて、感無量ってやつだね」
「ええ、落とさなければいいけど」
「嫌なこと言わないでよ。心配になってくる」
「それじゃあ、行く?」
「行かないけどさー」
四人は苗の入った発泡スチロールの箱を、問題なく持って帰ってきた。何でこんなに、ホッとしてるんだろ。
箱を開け、苗を確認していく。
「イッヒッヒ、これがパプリカか」
「部長、気持ち悪いです」
李華に続いて小袖まで、
「そうですよ。それに瑠奈と雅も待ってますよ」
瑠奈と雅は手を振り否定するが、すでに長靴を履いていた。
「瑠奈は長靴黄色にしたんだね?」
「はい。安かったので、これにしただけですけどね」
「ハハッ。それで雅は、赤と」
「はい! 燃えるような赤にしました」
「太陽は嫌いなのに?」
「違います部長。太陽が嫌いなのではなく日差しが嫌いなのです!」
「つまり部長、彼女は波長が短い不可視光線のことを言っているんだ」
瑠奈の言葉が難しすぎて、説明がより複雑になっているような気がするんだけど。
「紗綾、鍬とショベルが足りないわね」
菜園に移動すると今度は、人が増えたら増えたで備品がないのだ。
「もう、分かってるよ真空。エプロンも人数分ないんだし」
ということで、
「それじゃあ私は、パプリカの準備をしてくるよ」
と言って、プランターに取り付ける分の支柱を物置から取り出した。
「部長、トマトの分の支柱残しておいてくださいよ」
「大丈夫だって、李華。えだまめで使ってた分の支柱が回せるんだから。あと落花生の種まいたら、鳥に食べられないように寒冷紗かけるからね」
この後も結局、片っ端から指示してしまう。
「種は一箇所に三粒かな。あとで間引くから。トマトも大玉で重くなるから、支柱しっかり立ててよ」
二手に分かれて作業することができず、部室に戻るともう夕方だ。
「疲れて動きたくないだろうけど、帰宅の時間遅くなると怒られるから今日はここまでで。水やり当番とかは、明日決めるから」
慌しくみんなに伝えると、今日の作業は終わりにした。
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