ガングゥート

いつみきとてか

第1話 ガングゥート

犠牲を清らかならしめよ。自分を犠牲にした者は、自分を犠牲にしたことを忘れるのが、美しい犠牲の完成なのだ。

――川端康成


悴んだ手の平は紫で、生きている感覚はなかった。

だから支払う。切り売りを自らの体で行う。

僕は僕を切り売ってチカラを得る。何者にも勝る盛大な犠牲の上で僕は――

――僕は成り立っていた。

僕は"ガングゥート"。これから人間をやめる人間だ。


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