第616話 第四の???.5
ドボン、とタゴスがキリコの攻撃を受け、マグマの海に落ちた。音こそは軽いものの、赤いマグマの柱が立っていた。
「おおー…」
それを傍目に、オレは密かに感動していた。
魔法陣、飛ばすことできるのか。
拳を見つめ、思わず感嘆の言葉が漏れた。
氷の帯が溶かされて焦ったところに、勿論無傷なキリコが現れ、当然のごとく蹴りを繰り出そうとしていた。
「だから物理は効かないって言ったのに!!!!」
火事場の馬鹿力ってやつだろうか?それとも危機感が成せた技か。
焦るユイを視界の端に捕らえつつ、拳に魔力が集まった。魔力は即座に二つの魔法陣を形作り、思い切り踏み込んで、前方のタゴスに向かって蹴りを放とうとしているキリコの脚目掛けて飛ばした。
ほぼ、無意識だった。
それでも魔法陣は見事キリコの脚に着弾し、発動。
樹の幹ですら蹴り折る一撃がもろにタゴスに入り、マグマの海へ叩き込まれた。
反射の盾の魔法陣を付加したとはいえ、あの蹴りがオレに入っていたらと思うとゾッとする。タゴスすまんな。
『キリコ落ちてるよ!』
「やっべ!」
氷の帯を作り出すのには間に合わない。
「ネコ後は任せた!」
それだけ言い残すと慌ててキリコの元へとジャンプした。落ちてきたキリコを受け止めると、自分の脚を眺めて驚いた顔をしていた。もしやこの人も無意識に蹴り放っていたのだろうか?
「アンタ何かした?」
「しました。本当にビックリするのでやめてください」
「むり」
絶対この人本能だけで動いてる。いや、わかってたけど。
呆れる通り越して悟る。
もう一度ジャンプしようとして、突然視界が真っ白になって慌てた。とんでもない水蒸気で噎せる。タゴスが復活したのかと身構えていたら、地面が出来ていた。
「!」
いや、これはマグマが固まった地面か。
疑問に思いながらも、脚に衝撃逃がしの魔法陣を付加しながら着地すると、盛大に水に濡れた。
いや、海水だ。
広範囲とまではいかないが、そこそこの距離に黒い岩石に覆われた陸地と海水が満たされている。なんだ?
しかもこの海水、熱いところと冷たいところが混ざってて不思議な感じだ。
「おーい!大丈夫かー?」
バシャバシャと音を立ててユイさん達がやってくる。後ろからはネコを肩に乗せたアウソ。ネコの尻尾は海水に浸かっており、冷気が滲み出ている。なるほど、アウソの海水をああして冷やして、地面を急激に固めたのか。考えたな。
「いつまで横抱きにしてるの。下ろしなさい」
「あ、はい」
キリコを下ろしつつ見渡してみると、アウソを攻撃していたマグマの柱が消えている。
タゴスがマグマの海に落ちたから消えたのか。
このまま終わればいいんだけど。
しかし、そう思ったのも束の間、再び地面が激しく揺れ動き始めた。
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