第597話 第三の門番.14
暴食の主を気休めでも役に立つならとニックの腕に巻き付けた。相当痛むのか、暴れるニックを何とか抑えながらも着地する。
大丈夫かと見てみれば、目からは涙と一緒に黒いヘドロが流れ出ている。早めに治療しないといけないが、とにかくニックの救出は果たした。後は此処を脱出するのみ。
『…ハハ、アハハハハハハハハ!!!!!』
突然ピエロが笑いだす。
「!? うぐっ!!」
根が物凄い勢いでピエロへと集まり、次々に潜り込んでいく。その最中、すぐ近くにいた三人へと襲い掛かる。ユイが防御が間に合わず弾き飛ばされるが、シラギクはすんでで結界を張って即撤退し、キリコも得意の跳躍で攻撃範囲内から脱出。空中で一回転すると、すぐ近くに着地した。
『ふぅーー~……』
全ての根がピエロへと戻り、ふらつきながらもピエロが立ち上がると、未だに刺さったままだった針がズリュンと抜け落ちて音を立てて転がった。
『…で? そいつを助けたからって、その後はどうするつもりなんだーい?一体ここがどこだか分かってる?? 鏡の世界の奥の底。入れば二度と出られない地獄の監獄…』
仮面に空いていた穴は、みるみる内に塞がっていく。
『どこにも逃げ場はナーイナイ…』
背中に納まりきれなかった根が蛇のように首をもたげる。
『なのに…』
ボコボコと床が泡立つ。
『一体どこへ行こうというんだい??』
大丈夫。大丈夫だ。印はちゃんと付けてきた。
飛べるはずだ。
「奥の手はあるんだよ! 早くこっちへ!」
光印ノ矢はオレに接触していないと一緒に飛ぶことができない。魔力融合したネコに尻尾を使って全員を確保し、ネコもしっかりとオレにしがみつく。
後は発動させるだけだ。
うまくいけ!!
祈る様な気持ちで発動をした。だが。
(…………うそだろ…)
うまくいかなかった。
魔力の問題なのか?人数か?はたまた距離の問題なのかは定かではないが、感覚的には飛ぼうとしたところを、いくつもの蓋で通路を遮られた感じだ。
冷や汗が流れる。これはまずい。
「どうしたんだ?アマツ君」
何も起こらないことに、どうしたのかと訊ねてきたが、それどころではない。まさかこれが使えないとなると、またネコに頑張って飛んで貰うしかないが、あの距離だ。魔力が持つのか怪しい。それに、さっきの通路が使えるのかもわからない。
ニタニタとピエロが笑っている。
どうした?逃げないのか?とピエロが煽ってくる。
「ライハさん。飛ぶのでしたら合図をしてください。結界で思い切り打ち上げます」
心強い。
これはもうオレの魔力も全力で流し込むかと覚悟を決める。
きっとピエロは妨害をしてくるだろうが、何とかするしかない。
「……ぐ、ぅ…」
その時、ニックが呻き声をあげた。
「ニック!!」
「ニックさん!」
アレックスとシラギクが声をかける。
未だに片腕で、雑ではあるが抱えてたニックが目を覚ましていた。
不安の種がひとつ消えた。
まだまだ大ピンチではあるが……。
既に視界が黒で埋め尽くされる程の影が壁からも柱からも生えて増殖していく。
その時。
── おいへっぽこ宿主。ここを切り抜けられる可能性を見付けたぞ。あのピエロの絶望顔を拝みたかったらボクの案に乗りやがれ。
「!」
エルファラから助言が降ってきた。
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