第587話 第三の門番.4
「ぎゃあああああーーー!!!」
思わず悲鳴が上がる。
黒い格子状のものが長方形の枠組みとなって掠れて何処までも何処までも続いている。それこそ、先が掠れて見えなくなる程には何処までも続いていた。
「ネコ!!」
『分かってるよ!』
背後でネコが翼を広げる音が聞こえ、ぐんと体が引き上げられた。
ネコの尻尾が伸び、自力で何とか出来る者、出来ない者全てを捕まえ、落下を食い止めた。
「よし、これで安し──うおお!!?」
ガクンと突然ネコがバランスを崩して急降下をした。だが、それは真横に、だ。きりもみになって落ちたことにより何処が下なのか分からなくなったが、再び体制を立て直して浮上する。だが、それは僅かな時間で、再び落下を繰り返した。
『ちょっと、なにここ突然あっちこっちに引っ張られるんだけど!!』
「迷宮でこんなところあったんだぞ!!重力濁流層っていうやつだ!!気を張ってないと壁に叩きつけられるやつ!!」
「なにそれ迷宮こわい」
オレはそんな迷宮まだ知らないが、そうかこれ重力なのか。
『どっちにしても疲れるよここー!!』
「きもちわるい……」
そうこうしている内にユイが酔ったらしく顔色を青くして口を押さえていた。そんなユイを見て、吐きやしないかとハラハラが加わる。というよりも。
(こんな所でさっきみたいに襲われたら防ぎようがない!!)
どこかに出口があるはずだと魔力の目で探し回っていれば、ただの枠と何もない空間だと思っていた箇所がぼんやりと輝いている。それが、何ヵ所も。
しかし、すぐ近くにある光る出口に向かおうとしても、狂いに狂った重力のせいでまっすぐ飛ぶこともままならない。
どうしたもんかと思っていれば、シラギクが口の近くに手をやり、大きく息を吸った。
「アウソさん!!水です!!水をたくさん放水してください!!」
水?
なんで水??
疑問を抱きつつも、アウソが了承し、海水を大量に放った。
「!」
すると、海水はあちこちに飛んでいき、そこかしこで大きく渦を巻き始めた。海水は浮くはずがない。ならば、重力に従い落下しているだけなのだ。
とするなら、水の流れた場所はそのまま重力の流れ。
「なるほど!こうすれば見える!」
あとは出口に向かって流れる水を見付けるだけだ。
「見付けた!」
いくつもの流れが渦を巻き、あちこちに水の塊を作るなか、一つだけ出口と思わしきところへと到達し、姿を消していた。あれが本物か、残りは全部偽物だったのか。
「ニックさん!あれですよね!」
「ああ!あそこに向かって飛べ!!」
『あいあいさー!!』
ネコが狙いを定め、流れに沿って突っ込んだ。
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