第575話 第二の門番.3

体が跳ね上がる。


空中に放り出されているのがニックとシラギク、そしてキリコ。他のメンバーは武器を突き刺し耐えたか、耐えたヤツにしがみついて凌いでいた。


『後ろからおっきな羽虫が来るよ!』


跳ね上げられる瞬間、オレに飛び乗ったネコが警告を発する。


後ろからは羽虫。

すかさず手の先から電撃を飛ばして羽虫を撃退。雷の矢を使う迄もない。


堅い甲羅を半壊、揉んどりうって落下していく。


あれ?意外と矢じゃなくてもいけるな。


突然の破裂音で驚き、すかさずその方向を見ると、キリコの蹴りが炸裂していた。しかもオレよりも虫の損害が酷い。


「おおう…、大半が消し飛んだ怖い」


オレやアウソ、ノルベルトを回避させるために繰り出す蹴りが恐ろしく手加減されているのを改めて痛感する。


でなければ三人とも今頃木っ端だ。


「シラギク!」


ニックから悲鳴の様な声が上がる。


ニックは視界反らしか虫除けの魔法陣でも使ったのか、羽虫は大きくスルーしていき、その代わりシラギクの方向へと飛んでいく。


前方の一匹を結界で防御している後ろからニックの虫が接近しており、ニックの声で虫に気付いたらしい。


慌てて放電するが、焦って羽先だけを破壊したが、残った三枚で器用に体勢を立て直した。口が大きく開かれている。


もう一撃間に合うか!?


そう思った瞬間、下方から光の矢が飛んできて、虫を貫いた。


ラビだ。懐かしの高火力火炎弾を飛ばしたらしい。そんなラビを驚いた顔のレーニォが見てるのが面白い。


ブンブンと再び耳が羽音を拾う。

どうやら羽虫達は、巣から離れたモノを目掛けて飛んでくるようだ。

みてみれば、かなりの数の羽虫が集まってきている。


「ネコ、回収頼んだ」


『おっけー!』


「ニックここは任せとけ!」


「そうか?じゃあ頼んだ!」


尻尾で三人を回収している間に、集まってきた羽虫を雷で一掃する。今んところ城の中に来てから活躍してないし、恐らくこの部屋でオレはまともに動けないだろうから、ここで役に立っておきたい。


さっきは蜘蛛のせいで反応が遅れたけど、蜘蛛さえ近くにいなければ充分動ける。


全くなんて部屋を用意してくれたんだ。


そんな事を考えつつ空中で身を捻りながら着地を果たし、ビックリしたと顔をあげ……。


「……………」


『わーお』


すぐに後悔。


悲鳴を上げなかっただけでも褒めて貰いたい。


『そこの人間ゴミめ、たかが虫と言ったな。本当に“たかが”か、確かめさせてやろう』


どっかの国の出し物でみたことのある、それこそ、ビルに張り付き家を破壊するのも容易だろう大きさのアシダカグモとジョロウグモを合わせた様な蜘蛛が、地面一杯の蜘蛛を引き連れて目の前に降臨していた。


魂が口から抜け出しそうなんですけど。














アウソside


(ヤバイな、ライハが完全に硬直してしまってる)


銛を構えつつ、後方のライハを確認すると、蛇に睨まれた蛙のようになっていた。


一緒に旅している最中、釣り下がった蜘蛛や蜘蛛の巣、地面を這う蜘蛛にいちいち体をビク付かせていたから苦手なんだろうとは思ってたが、まさかここに来てこんな事になるとは思ってなかった。


きっと此処では満足に動けないだろうからなんとかしないと。


虫は全般的に平気なアウソも幽霊や見えないものへの苦手がある。だからこそ、ライハの気持ちがわかる。

きっと今頃ライハは心の中で『ハンニャシンキョー』とやらを唱えているのだろう。


『ん?おやおや?そこにいるのはウローダス様の世話係じゃないか?もしかして裏切り者かい?』


クスクスと蜘蛛の癖に器用に笑い、全ての目が目の前にいる双子へと注がれた。


「う…裏切り者かだって? 私達は師匠を助けに来たのよ!!」

「ウコヨの言う通り!!あんたたち師匠に何したの!?元に戻して!!」


『ふふふふふ…』


ギチギチと音を立てて蜘蛛の牙が揺れる。


『なんだ。何にも知らないのか?可哀想に…』


「なにを…っ!」


『ウローダス様は元々私達側さ!!知らされてなかったって事は、元々切り捨てる予定だったって事…。ふふ、ふふふふふ…。可哀想に可哀想に…。それなのに助けに来たって、ふふ、滑稽すぎる…っ』


蜘蛛の言葉で双子の威勢は消え、代わりに顔色を悪くさせていた。


「…うそ、うそよね…」


『ほんとさ!何なら今ここで頭をもいで持っていってやろうか?きっとウローダス様は何にも思わないだろうさ!!』


蜘蛛の笑い声が辺りに響き渡る。


だが、それは途中で中断された。


ライハとラビの方向から攻撃が飛び、大蜘蛛へと直撃したからだ。

もうもうと立ち上る煙が晴れる。

直撃した箇所は少しヒビが入っていた。


ライハが口を大きく開け、何かを言おうとした。

その瞬間。


「そん──」

「てめえ!!!レディ二人を泣かすとは覚悟できてんだろうなぁああ!!!!?」


ライハの言葉に被せてラビの怒号が響き渡った。



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