第563話 第一の門番.2
絶えず突き上げられているかのような振動。蠢く蔦に追いかけられながらもオレ達は安全な足場を確保するために逃げた。
「危ない!!」
崩落する地面に脚をとられ、危うくビギンが落下しそうになったのをネコが尾を使い救出し、アレックスは韋駄天を発動し、ニックだけでなくヒイヒイと悲鳴のような呼吸をしていたシラギクも担いで走り始めた。
瞬発力はあっても持久力はないらしい。
シェルムはデアを担いで走り、ふと、後ろを見るとキリコが獲物を狙うような気配をしていた。
いや、拾った瓦礫で蔦の軌道を逸らしていた。
走りながらだというのになんて器用な。
「おいウッソだろう!?ここでも定番過ぎる演出は要らないんだぞ!!!」
と、感心していれば前方でアレックスが叫んでいた。
なんだ?と見てみれば、廊下を塞ぐように壁が落ちてきていた。
人が潜り抜けれるような隙間はもうない。ズズンと音を立てて道が塞がった。
後ろからは数え切れないほどの蔦が迫ってきてる。いや、あれは蛇か?蔦の端が口のように裂け、中からは長い牙が液体を撒き散らしながら飛びかかってきている。
「レーニォ!!」
「任せときィ!!」
ガルネットがレーニォに声を掛けるや、すぐさま意図を汲み取ったレーニォがハルバートを大きく振り上げた。
狙いは横の壁。
遅れてガルネットもハンマーを振り上げ、レーニォと動きを合わせて壁へと叩き込んだ。壁は容易に吹っ飛び、外側の光景が露になる。
見渡す限りの密林。
本当に一体此処は何処なんだ!?
そんな疑問で頭は一杯だが、考え込んでいる時間などあるはずもない。
足は床を蹴り、壁の外へと身を踊らせていた。
「───っ!!」
地面は遥か下。
「エアフロートゥ!!」
ニックが魔法を発動させ、ぶわりと下から風が吹き付け落下速度が落ちる。だが、足りない。
「ネコ頼む!!」
『うん!』
尻尾が蜘蛛の巣状に伸びる。近くの枝に引っ掛けるとネットへと変化し、次々にネットへと着地した。あらかじめニックの魔法によって減速していたために大したダメージもない。
だが、そこで終わりではなかった。
突如として先程まで居た廊下らしき建物が破裂し、中から蔦が大量に縦横無尽に勢いよく伸びた。
「…あ!みんな今すぐに目と耳を塞いで!!」
「!?」
キリコが背後で何かを振りかぶっていた。
何かをするつもりだ!
ほぼ条件反射的にオレとアウソは耳を塞いで目を瞑る。それを見て何をするつもりなのか分からないが、アレックス達も指示にしたがって同じようにした瞬間、キリコは手に持った物を明後日の方向へとぶん投げた。
黒い玉だ。それが6つほど。
放物線を描いて玉は次々に近くにあった木にぶつかる。
次の瞬間、黒い玉は凄まじい音と光を放ち、辺りに生臭い匂いを漂わせた。
発光音弾だ。
目の前で蔦が方向を変え、キリコが投げた発光音弾が破裂した木へと群がっていく。ヤテベオの仲間だったのか。
アウソが「なるほど…」と納得したような声をこぼしているなか、ハンターではないアレックス達が驚いた様に目を丸くしている。そんな中、シラギクとビギンだけは「それ効くんだ」みたいな顔をしていたが。
「ほら、今のうちに」
キリコに促されて、出来る限り音を立てずに地面へと降りた。
上を見れば、まだ蔦は木に群がっており、数が多いせいか、巻き付かれている木がミシミシと音を立てていた。
「なんだ?あれ」
と、ニックがキリコに訊ねた。
「発光音弾。ヤテベオみたいな感知する人喰い植物に有効な誘導弾よ。まさかあんなに効くとは思わなかったけど」
「凄いわね!!じゃあ次もあれが来たらまた投げれば良いのね!!」
「もうないわ」
え、と思わず声が出た。
「だって最近使う機会なかったし、買い置きしてなかったのよ。さっきので最後」
「あー……そうかぁー…」
発光音弾は作るのが難しい。だから基本、武具店で買い置きなのだが、仕方がない。
「まぁ、次来たら何とか頑張ろう」
無い物ねだりしても出てこないし。
「取り敢えず、早く塔へ行こう。さっさとこんな所は抜けしまうに限る」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます