第555話 □□□□□

どん…










遥か遠くの地で、音が聞こえる。












どん












また音が聞こえ、微かに地面が揺れた。








どんっ







揺れが大きくなり、体が跳ねた。





どんッッ





間隔が狭まり、影が差す。





ず、





振り返る。そして目の前に聳えるモノに驚愕した。








ドンッッッ!!!!!!!!







揺れと共に捲り上がった地面がバラバラに砕け、その先にある何かの皮を鞣して作った何かが見える。巨大。あまりにも巨大過ぎて、初めはソレの正体が理解できなかった。


ああ、とうとう俺も終わりか。


まるで天からハンマーが振り下ろされたかのようで、容易にソレで押し潰されて終わる瞬間が想像できた。


だが、そうはならなかった。



「  そこ、  どいてええええ!!!!   」



突如として風の唸り声と共に少女のような声が頭上から降ってきた。



「サズ!!伏せろ!!!」


「!?」



ウルマの声に従いその場に伏せると、その頭上を巨大な何かが風を纏って通過した。


衝撃波が襲ってくる。爆発音が耳をつんざく。だが、サズは目の前の光景にただただ唖然とした。


先程まで相対していた巨大芋虫。いや、団子虫に鉄の塊が衝突し、なんと、地面から浮き上がった。信じられなかった。なのに、さらに信じられないことに、あまりの衝撃で団子虫はひっくり返り、腹を見せた。そこへ、地面を抉った天のハンマーが突き刺さった。



「   じゃま!!  」



いや、それはハンマーなのではない。脚だ。

影が移動して日が差し、思わずサズは額に掌を添えた。



女の子だった。

服装は遥か昔の北の住人のに良く似ていたが、それよりも目を引くのはその体躯であった。


体長、凡そ49.5尺程(15m)、どこぞの建造物かと思ってしまうほどの体長を持つ女の子が次々に苦戦を強いられていた魔物の虫を潰していった。


その様子に周りの戦っていた者も思わず唖然として武器を下ろしてしまうほどで、誰かが、ハッとしたように「あれが巨人族か」と呟いた。


殆ど、ウォルタリカ以外では伝説となっていた存在が、軽々と虫を薙ぎ倒していく。


乾いた笑い声しか出ない。

初めから参戦してくれればどんなによかっただろうと思ったが、巨人の娘が通過した地面を見て、いいやと考えを否定した。


サズの後ろ、ちょうど足を着いた場所は見事な大穴が出来ており、その周りには盛大なひび割れ地面の捲り上がりと大惨事になっていた。

きっと初めから参戦してれば、確かに犠牲は少なく済んだかもしれないが、地形は地図を作り直さなくてはいけないほどにぐちゃぐちゃになっていたのだろう。


現に、サズの後ろのクレーターからは、地下水を踏み抜いたのか水が滲み出していた。






「…間違って踏まれなくて良かったな」


「……ほんとにな」




竜巻が通過した後の様な現状に、確実様々な思いを巡らせながら、彼女の進行方向から運良く外れた生き残りの虫を退治しに向かった。
























「   やばい   やばいよ…   」



めったに流れない冷や汗を流しながら、巨人族の娘はハンマーを担いで走った。


ローデアから出たことなんで無かったから、すっかり迷ってしまった。お陰で約束の時刻を過ぎても目的地へと辿り着けてすらいなかった。


彼女は叫んだ。



「  大遅刻だあああーーー!!!  」

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