第482話 裏の者.5

グレイダンに事情を説明して、首都の近くの森で下ろしてもらう事になった。グレイダン達の巨体は目立つ、なので、先日泊まった町でもそうだが、少し離れた所に降りて、人型になってグレイダンのみ付いてくるようにしている。


勿論キリコの駿馬に二人乗りだ。


キリコ以外の駿馬に乗る気は毛頭無いらしく、キリコがいないのなら走ると主張する。

竜ってあれだな、一途なんだな。


「ライハ、念のために顔は隠しとくよ」


「……わかってますよ」


首都が近付き、カリアに言われた。

オレの顔は良くも悪くも知れ渡っている、余計な混乱を避けるために仕方のないことだ。

フードを深く被り、門を通る。途中、何人かの門兵に気付かれた様だったが、複雑な顔をしつつも何もなかったように接してくれる者や小さな声で「お気を付けて」と言ってきた者もいた。


首都にはまだオレが軍を抜けたという情報が流れて切っていない。


だけど、人の口に戸は立てれないから、軍関係者辺りは察して助けてくれた。ありがたいことだ。

幸い、軍関係者以外にはバレず、絡まれることもなかった。

新調した服も、軍服とは正反対だから、それのお陰もあるかもしれない。




「ここかな」


門兵に貰った地図を手に、カミーユに言われた宿を見付けた。


そこそこ大きい宿だ。


まぁ、パーティー人数が多ければ、安宿には入り切らないだろうから仕方ないのだろうけど。


受付の人に、訊ねたい人がいると名前を言えば、お待ちしてましたと、あっさり通された。

どうやら事前に言ってあったらしい。


階段を上がり、ドアに手を置く。


「………」


少し怖い。


『ノックしないの?』


「するよ」


一呼吸置いてからノックした。


「はいはい、どちら様?……あ」


「こんにちは」


空いた扉から、小さい女の子が出てきた。尻尾が吃驚したようにピンと伸びている。


「ホントに来たヨ。レーニォ!!来た!! どーぞ!入って!」


「失礼します」


「まっ!!ちょっ!いたたたたたた!!!痛い痛い痛い!!」

「暴れんなよ、また折れんぞ」

「乱暴にするからや!!」


入ると、レーニォがニックに腕を治療されている最中だった。相当痛いのか暴れるレーニォをノルベルトが押さえている。


タイミング悪かったかな。


「お、ちょうどいいタイミングに来たな。空いてるところに座ってくれ、すぐにこのバカ治すから」


ニックが気付き、声をかけてくれた。


ひとまず空いてるところに各自腰を下ろした。


「どうぞ」


すると、目の前にコップが差し出された。


レーニォを追い掛けていったフリルの服の女性だった。

ありがたく受け取る。


「ありがとうございます」


「……べつに」


ぶっきらぼうに言われた。

何だろう、初対面があれだったから引かれたのかな?


と思ったけど、全員に対してこうだったので、そういう性格なのかなと思った。


「さて、待たせたな」


「……」


レーニォが半べそをかきながら座ってる。どんなに痛かったのだろうか。その隣にニックが腰を下ろす。


「お前が来たってことは、決心がついたのか?」


「ああ。それで、ちょっと手伝ってもらいたいことがあって来たんだ」


「ほう?」


言ってみろ、とニックが促した。


「武器を取り戻すのを手伝ってくれ」

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