第461話 虚空を見る.11
恐る恐ると夜営地に戻るとラビが待ち構えていた。
「よお、遅かったな」
(あれ?怒ってない)
いつもなら眉をつり上げているラビが、今回はそうではない。どうやらオレがやらかした訳ではなさそうだ。
「オレの事探してたって?」
「ああ、アーノルドから借り物だ。この間預かった物を最高品質に仕立ててやったから是非活用してくれってさ」
アーノルドの姿はない。この用事のためだけに戦場を突っ切ってくれたのか。
せめて労りのお茶をあげたかったな。
「これ、もしかして」
ラビから受け取った二つの品を見て目を丸くさせた。
一つは色合いが変わったが、見た目は『暴食の主』だ。そしてもう一つは刀の飾り珠だった。
「説明書だと」
「ありがと」
手紙を開くと、初めに労いの言葉、そしてこの二つの説明が書かれていた。
違和感がある。なんの違和感か分からないが、いつもの文面なのに雰囲気が違う。
なんだろうと思いながらも読み進めていった。
まず暴食の主。
元々は近くにある道具を食べまくる暴れん坊がオレの呪いで反転し、魔法を食べていた。今回それが切断されてしまったので、新たな神具として復活させた。名は変わらないが、呪い耐性を付属し、所有者の魔力の状態を感知して害のある物を判別して喰ってくれる。
オレの場合は神聖魔法無効化。
嬉しすぎて涙が出た。
オレの様子にぎょっとする隊員がいたが、ラビが大丈夫だと伝えれば、隊員は「お説教中かな?」と空気を読んで離れていく。ラビは解せないという顔をしていた。
仕方がないので寝床に持ち帰って読むことにした。さすがに夜営地のど真ん中で突っ立って手紙呼んでるのは邪魔だ。
次に刀の飾り珠。
名を『ウツシ』。実はこれ、まっぷたつになった盾の飾りの一部で、周りにある魔力の強いものに影響され、付属されているものに投影するらしい。前回の盾は、本当は誤って混入したモノだったが、オレの暴食の主に影響されて魔法を喰ったり、防壁範囲を広げたり出来ていた。
でもそれは本来の使い方とは異なるらしく、本当は剣に付けて使うらしい。
「どれどれ、と」
早速付けて感動した。
黒剣が完全復活。
無理に魔力を入れなくても初期状態から元に戻り、おまけに魔力の質を変化させればその通りに変化する。
雷の質に変えればサンダーソードに。氷の質に変えればアイスソードに。
思わずギリスの方向に向かって手を合わせた。
ありがとうございます。ギリスの技術職の皆さん。
これでラビからのお叱りが減ります。
『良いなぁー!!良いなぁー!!ライハだけズルいーー!!』
ネコがのし掛かりながら言う。
そうはいってもなぁ。
「ん?」
ピリッと紙から電流が流れて目を移すと、紙の文字が燃え、その下から新たな文字が浮き上がった。
こんにちは、お久しぶりです。
そんな文面から始まった文章は、ユエからの物だった。共通語でもギリスの文字でもないそれは、今は存在しない文字で綴られていた。他人に読まれるのを防ぐ為か、それとも別の意図があったのか。ともかくも、ユエから重要な内容が書かれていた。
本来ならまずは軍の上から伝えられるものだが、もしかしたら間に合わないかもしれないといけないから、現地にいる勇者、オレに直接伝えようと思ったとのこと。
ちなみにケータイとやらに文を送っても目を通さないので仕方なくこの手段を取ったのだと書かれていて血の気が引いた。
そういえばここ数ヵ月、忙しくて持ち歩きはしているものの電源を入れてすらいなかった。
後で確認せねば!!!
最後に、ネコに荷物の奥深くに仕舞い込まれている神具を渡しなさいとあって首を捻った。
そんなのあったかな?
まぁいいや。指示されたからには探してみよう。
『なに?』
「ネコに手渡すものがあるって」
『本当!!? わーい!!プレゼント!!!』
大きい体で喜びを露にするネコ可愛い。
手紙は読み終えると燃えて消えた。
さて、探してみるとするか。
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