第443話 通令.1
更に数日経ち、ようやく体が違和感無く動けるようになってきた頃、変な噂が飛び交うようになってきた。
曰く、悪魔達は動物に毒を喰わせて、それを食べた人達を殺そうとしている。
「もしそれが本当なら、俺達食べるものねーですよね!」
後ろで最近ここに配属された奴等がその話で盛り上がってる。
此処は食堂、出てくる肉が減り始めたからこの話題になったのだと思う。
あの襲撃以来、偵察の奴が来る以外静かな国境。チャンスだとオレ達は続々と戦力を集め、着々と準備を進めている。
その噂は、新しく配属された奴等から広がった。
確かに最近体調を崩して急死する人が増えているとは聞いたが、伝染病が原因じゃないのか?
「それが、本当に肉が原因らしいんですよ」
と、ギリスの魔術師アーノルドが言う。
しばらくギリスへと新しく作り出した魔方陣の情報共有と更にバージョンアップするために戻っていたのだが、最近また前線に戻ってきた。
今じゃあすっかりうちの隊に馴染んでしまっている。
リオンスシャーレ南部戦ではこうやってゆっくり食べることもできず、辺りを警戒しながら早食いしてたからな。
特にうちの隊は魔法が使えるものが多い。
ギリス人の…ニックの事を何て言えばいいか分からないが、ギリス人に対しても特になんとも思わないどころか、どうしたらそんなにも強力な魔法を作れるのかと尊敬している空気を察してか、他の部隊よりも居やすいのだろう。
「証拠はあるのか?」
肉の代わりに出され始めた大量の豆をつつきながら、ラビが訊ねると、アーノルドが頷く。
「つい先日の事なんですけれど、とある魔術師が情報提供してきたんですよ。確かに変な病気が流行ってるなくらいにしか思ってなかったんです。うちはそんな病気で具合悪くなる人なんていなかったですし、優先順位はこっちのが上だったので…。でも、送られてきた資料とカプセルで驚きました。まだ一般に告知はしてません。混乱を避けるためと、どの肉がソレなのかを調べている途中なので」
『告知してない?なんで?危険じゃないの?危険なら言わないとダメじゃん』
「ただでさえ大陸の3分の1が占領され、避難民で食料不足なのです。やむを得ません」
「……、納得は出来ないが、今はこうしなければいけないのは理解できた」
納得は出来ないがな。
ただでさえ削ってる食料。肉を禁止すれば何人の、いや、何百人の餓死者がでるか。
………ん?いやまてよ?
なんか忘れているような気がする。
「失礼します!!ライハ遊撃隊隊長は居られますか!?」
何かを思い出し掛けたところで、声がかけられ霧散した。
「はい、なんでしょう?」
「緊急収集です!!すぐにお集まりください!!」
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