第430話 悪夢.3
シンゴは強かった。まず、相性が悪い。相手は空を飛べる、そして空からガンガンに風の刃を雨のように降らせる。
これがまた
不可視の風がサイズもバラバラで、音がした時にはどっかしら切れている。いくら回復速度が高けれど、物凄く痛い!何て言うか、斬られた痛みというよりも抉られたり、裂けたりしたみたいな痛みだ。
『ライハ大丈夫!?』
「今んところは何とか」
服は結構切れてるが、回復速度は間に合っている。
だけど、シンゴは風の扱いが、まぁ流石にはじめからの属性だからだろうが慣れている。シンゴの方向から攻撃が来ないのだ。
正面から来たと思えば、次の瞬間には右から左から後ろから。
盾が魔法を喰えると言っても、方向が違ってたら喰ってくれない。それにシンゴも気付いているらしく、盾の死角を狙ってくる。そしてこちらから攻撃を仕掛けても、上手くかわされる。降ってくるのは風の刃だけでなく、地面抉る槍、大剣等々。
『ライハ!左斜めから来るよ!』
それでもまだ首がくっついているのは、ネコの鋭い探知能力のお陰だろう。
なんせシンゴは隙さえあれば首を飛ばそうとしてくる。
耳元で音が鳴る、その瞬間には襟が切れている。
くっそ埒明かない。
コノンの攻撃は休みなくキャンプに降り注いでいる。きっとラビが何とかしているだろうと信じているけど。
これは一旦地面に引き摺り下ろしてやらないと。
でもどうやったらこいつを引き摺り下ろせる?下ろすためには風を何とかしなければならないが、シンゴは風を操る。
それを何とかするということは、オレでいえば雷を取り上げるようなもの。
それでもこのままだと不利だ。
どうにか出来ないか?何処かにこいつの操れなさそうな風……、
すぐさま指笛を鳴らす。
つい最近
──ズドォォォオオオオ!!!!!
『『『わぁあああぁぁ……』』』
「!?」
「!!」
突然地面がグラグラ揺れ、キャンプのちょっと前の方で大爆発が起こり、盛大な砂埃を上げていた。聞こえてくるのは魔物の悲鳴で、砂埃の位置を見て、何が起こったのか悟った。
設置班の設置していた罠を突撃していった魔物達が踏み、瞬く間に全て作動したらしい。
空高く吹っ飛ばされる魔物の姿に、オレもシンゴもそっちの方に意識が取られる。
確か魔物の目の前で堂々と設置したはずだが、それなのに踏むってバカなのかフェイクだと思ってたのか。
突然の事態にコノンの追撃が止まり、オロオロとし始める。きっとコノンは私が間違えて罠の方に攻撃の岩を飛ばしてしまったのかと思っているのだろう。口許に両手を添えて「どうしよう……」と泣きそうな顔で呟いているのが聞こえた。
シンゴも全くの予想外だったのか唖然としたままだ。
こいつら、不測の事態に対する耐性が低いのか。
そうこうしている間に
「あの二人を吹き飛ばせ!!!」
指示を出すと
ネコが後ろを向いてびびっている気配を感じる。
なんだ?
一応確認の為にとほんの少しだけ後ろを向いて、逃げ出したくなった。
風龍が竜巻を作り出すのも結構な恐ろしさだったけど、
雲が渦巻き、稲妻が走ってる。
すぐさま
シンゴに魔力が集まり始める。竜巻を止めるつもりか?
「させるか!!」
シンゴに雷を飛ばし、妨害をする。
雷は相変わらず避けられるが、それでも集中力は削げれている様で、迫ってくる竜巻を焦った顔で見ている。シンゴでも、精霊が起こした災害を防ぐことは出来ないのは嬉しいな。これで余裕で防がれたらどうしようかと思ったもん。
「コノン!!僕を守れ!!」
「!」
シンゴの言葉にようやく竜巻に気が付いたコノンがシンゴを守ろうと、土の壁を伸ばしてくる。シェルターなんか作られたら耐えられてしまう。急いで足に魔力を集中させて、地面を凍らせると、コノンの土が止まった。良かった止まってくれた。
「え?氷?」
コノンがどうにかして土を動かそうとするも、ガチガチに凍った土は動かない。ならばコノンの作った壁まで移動すれば良いとシンゴは考えたらしいが、その前に土の壁に雷を飛ばして破壊する。耐えさせてたまるか。
そうこしていると、ますます竜巻は勢力を増しており、最早竜巻の壁が壁のようだ。壁のなかでビカビカしているのは、
『……今さらなんだけど、ライハ巻き込まれるんじゃないの?』
「………うん。だから巻き添えにしようと」
ここでオレが逃げたらきっとシンゴ達も逃げる。だからこそオレは逃げずにここでシンゴ達を捕まえておかねばならない。
少しでも逃げようと動けば、
「なんで僕の魔法が消えるんだ!!なんで!?てめえ何しやがった!!竜巻も言うこと聞かないし!!新しい能力か!?」
そしてどうやらシンゴには精霊が見えていないらしく、竜巻も風の刃もオレの力だと思っているらしい。
背後から凄まじい圧が迫ってくる。
土も凍ってコノンは恐怖の目で竜巻を見つめているし、シンゴは逃げるに逃げられない。
それはオレもだけど。ネコがさっきから後ろガン見で尻尾を必死にオレの体に巻き付けて衝撃に備えようとしている。
そろそろか、と覚悟をしたところでなんか笑えてきた。風の属性持ちが相手の発生させた風に負けるってどういう気分なんだろうか、と。
「ネコ、羽出しといて」
『え、うん?』
ネコもようやく落ち着きを取り戻してきた。
翼を開き、体制を整える。きっと翼を使っても叩き落とされるだろうけど、その前にオレがシンゴに一撃入れたい。
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