第395話 戦場へ.7
悪魔の一人が振り向く。
「どうした?」
「いや、なんか視線が」
「気のせいだろう」
悪魔達は再び歩き出す。その後ろ、廊下に置かれた物の影からずるりとネコが姿を表した。
影歩き。ネコが形を崩して影と同化する得意技だ。形を維持する体力を保存できるので便利な技で、隠密行動にもってこいの技だ。
(さっき、撒くとか言ってたけど、何か育てるつもりなのかな)
ライハは何か嫌そうな顔をしていたけど。神聖魔法のやつとはまた違った嫌そうな顔だ。
ネコ的には臭いも無いし、よくわからない物だった。勿論食べるきも起きない。なのにライハはそれを回収したということは、何かしらあるって事なんだろう。
(ネコが確かめなくちゃ)
現在進行形でネコの左目はライハの視覚と繋がっているので、何かあれば反応するだろう。
「じゃ、俺こっち巻いてから行くから」
『!』
二手に分かれる。
一人は扉の中に入っていった。
(どうしよう、どうしよう、えーっと……)
『(ライハー、ライハー!どっち行く?)』
ライハに相談しようとしたのだが反応がない。今までライハはネコが何か言えば必ずというほど返答があったのに。聞こえてないのか?
『? あ』
もう一人の男も行ってしまう。
少し悩み、ネコは扉の中に入っていくことに決めた。
中は柵だらけだった。左右の柵が奥の方にずっと伸びており、中には動物の姿が。
牛や豚、犬、鶏、そして猫。
『…………』
家畜なのかと思ったが、そうではない。なんだここ。
部屋の奥の方から聞こえてくる削る音も気になる。音が止み、代わりに足音がやって来た。身を隠し様子を見ると、袋の中から器で掬って餌箱に入れていた。
「ほーら食え。どんどん食え」
動物の達は嬉々として餌に食らい付く。その姿は普通に家畜に餌をやる人だ。
だとしたらネコも補食対象ということになる。
(うえ)
考えないようにしよう。
「もう少ししたら出してやるからなぁ、たくさん食べて美味しくなれよぉ」
家畜なのに出すのか?
どういう事だと身を乗り出した瞬間、ドンッ!!と外から物凄い音が響いてきた。揺れる建物、天井からパラパラと埃が落ちてきた。
外で何かあったのか!?
『(ライハ!!ライハ!!何があったの!!?)』
返答はない。
『(ライハ!!?) !!』
ドタバタと複数の足音が近付いてきて扉が勢い良く開いた。
「おい!!人間の敵襲だ!!」
「なんだと!!何人だ!?」
「一人だ!!今外で覚醒体と戦っている!!」
「何でこんな入り込まれているんだよ!!」
悪魔の男が袋ごと餌箱に投げ捨てると、慌ただしく部屋から出ていった。
ライハがいつの間にか戦闘状態になっていた!!!
どうりで連絡つかないはずだよ。
後ろを見ると、動物達は袋に群がるようにして餌を食べている。
『ここは後でで良いか』
まずはライハの助太刀だ。
ネコは空いた扉から飛び出し、悪魔達が駆けていった方向へと走った。
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