第385話 隊長!.6

夜ご飯はこの辺で酪農が盛んなのかシチューやチーズが並んだ。肉もあるのだが、皆審査で疲れて食欲がないらしい。気持ちはわかる。だが食べないと持たないのを知っているので、1人バクバク食べていると軍人がやって来た。


「ライハ・アマツ様ですか?」


「? はい」


「エドワード様からです」


机に鞄が置かれ、何だと覗いたら書類の山だった。


「なんですかこれ」


「明日、必要になるとのことなので今夜中に目を通しておくようにとの事です。では失礼します」


完璧な敬礼で軍人は去っていく。

エドワードってことは隊についてのことだろうか。鞄を見る。だいぶ厚さがあり、重量もある。これ全部書類なのかと深い深いため息しか出てこない。こんな書類の山、受験の時にあったか無かったか。


「なんだそれ?」


「………エドワードさんからの素敵な素敵なプレゼント…」


「プレゼントにしては嬉しくなさそうだな」


「プレゼントにも色んな種類があるだろ?オレの場合これは……嬉しくもあり嬉しくないもの」


「?」









部屋に戻りランプを着けるとネコが影から出てきてクワァと欠伸をした。


『疲れた』


「お疲れさん。これ、美味い肉を選別してきたよ」


『ライハ太っ腹ー!!!』


持ってきた一番美味しかったパンと肉をベッド横の机に置くとネコが早速かぶり付く。何でも食堂は使い魔を食べさせる場所が無いと言うので、各自の部屋であげる事になっていた。確かに凄い人がいた。おそらく寮のハンターだけでなく軍人もいるからだろう。


「ただいま」


「お帰り。どうだった?」


「うーん。なんか凄い手紙来た」


ラビはギルドの虎梟便でおそらく来ているだろう手紙を受け取りにいっていた。そうしたらやはりと言うかなんと言うか。レーニォから大量の手紙。

軍に入ると言うことを心配しての事だったらしいが。


「全く兄貴心配しすぎなんだよ。いくつだと思ってんだよ」


「いくつなの?」


「17だよ」


「……酒飲んでなかった?」


「マテラは16からだよ」


「何で南こんな早いんだよ」


「さぁ?」


この世界は北に行けば行くほど成人年齢が引き上がる。これは一体何なのだろうか?ちなみにウォルタリカまでは成人年齢が20歳だが、ローデアに至っては25歳に跳ね上がる。何なのだろうか?


「で、何て返したの?」


「ん? ああ、モテそうだろ?って」


「………うん。そうだね」


それしか言えない。

書類の山を半分ほど処理し終え、欠伸が止まらない。流石に眠い。だが、これを終わらせなければ寝られない。しかしこう、なんと言うのか、魔法の本を見るのはとても好きなのに、履歴書の様なこの書類を見ていると眠くて仕方がない。ネコなんか興味本意で覗き込んできたのに、三枚目で寝た。どうやらこの書類には反転の呪いすら打ち負かす睡眠魔法が付属されているようだ。

そして今回までの悪魔戦のざっくりとした情報。


「まさかカリアさんが指揮取ってると思わなかったなぁ」


情報によるとカリアの指揮のもと、少しずつ押し戻しているらしい。そしてなんと大規模攻撃にあったときに巨大な赤い竜が複数飛んできて応戦していたと言う。おそらくその内の一体はグレイダンだろう。だが、他の竜はだれなのだろうか。


「俺先寝てて良い?」


「いーよ」


ラビとネコの寝息を聞きながら、オレはひたすら資料を読み進めたのだった。










疲れているエドワードと寝不足のオレが向き合う。目の前には昨夜の資料の山と、一足先に完成したオレの制服が置かれている。どうやら軍人の応募者が想像よりも多かった為、訓練の時間を多く取る為にもさっさと選別する必要が出来たので急ピッチで作らせたらしい。


「資料には目を通して頂きましたか?」


「ええ…。時間は掛かりましたが……。なんで一日でこんなに集まってるんですか?」


「いや、一応二週間ほど前から新しい部隊が出来るという話はありまして、具体的になった昨日辺りに希望者が続出したのでしょう」


「なるほど…」


それにしてもあんな募集要項で集まったなと感心する。拷問されても秘密を漏らさず、死地を駆け抜ける事ができ、生存の保証は無い、それでも敵を討ち滅ぼすために剣を振るえる者は立ち上がれ。と、誰が考えたのか分からないがオレ的には絶対に受けなさそうな内容だ。それでも集まるなんて、軍人とはドエムの集まりなのだろうか。


「選別の内容は決まりましたか?」


「取り敢えずは」


集まった数はなんと80に近く。そこからおよそ30人位まで絞り込む。まずは敵意悪意のあるのを排除して、そこからどんな状況でも生き残れる位に鍛えながら整理していく。内容は経験から抜粋した。後は実行するのみだ。


「必要な物は揃えてくれるんですか?」


「可能な限りはな」


「では、これとこれを」


昨日必要になるものを書き留めたメモを手渡すと、エドワードはフムと頷き了承した。


「では、よろしくお願いします」

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