第381話 隊長!.2

「何?了承したの?」


「うん」


首都に用意された宿屋に戻り、フリーダン一行以外のメンバーに何を話したか説明した。あの偉い人、エドワードと更に話し合った結果、オレから了承するに当たってダメ元でいくつか条件をつけさせてもらった。


まずは第一に秘密を守れる人。

ペラペラとこちらの作戦や攻撃方法を広められては不利になってしまう。

という建前。本当はオレの能力やネコについてなんだが、それについては呪いの装備の効果がいくつか合わさったせいで戦闘能力が上がっていると伝えた。

嘘はいけないが、この世界でばか正直に話してみろ、あっという間に裏の世界行きだ。


第二に、オレの使い魔達は悪意に敏感なので、もしスパイみたいなのが紛れていた場合、相応の対処をさせてもらう。

情報が力を持つし、すでに手配されているオレは絶好の獲物だろうから自分の身は自分で守ります。


第三に、仲間が補佐につくのを許可して欲しい。

それについては呪いの装備の発作の対応をしてもらうため。エドワードに優秀な医術師をつけると言われたが、特殊なやつなので慣れている人のが安心できると伝えた。北部にいる間、ラビはオレの修行の後、フリーダンとナナハチに医術を学びに通い、ノルベルト達プラスノノハラに頭を下げて回避力を上げる修行をしていた。

ラビ曰く、「どんな攻撃でも当たらなければ意味がない」と昔のオレのような事を言い出し、更に「力になるならどんなことでも勉強する」と言った。

オレはそろそろラビの爪の垢を煎じて飲んだ方が言いかもしれない。

一方オレはニックにずっとしごかれてたよ。久し振りに死ぬかと思った。魔法戦辛い。


そして最後に。


「(エルファラの目的を達成するため)オレは重度の戦闘狂なので出来るだけ多くの戦場に突撃するかと思うから堪えられそうな奴を回しれくれると嬉しい」


とんでもない無茶ぶりを要求したが、エドワードは口端をひくつかせながらも「全力を尽くそう」と飲んでくれた。


「条件えっぐいなー。いないだろそんなの」


と、ラビ。


「ハハハハ!!君にしてはやるじゃないか!!!」


笑うアレックスに。


「交渉はそんなもんだろ?」


「だよなぁ」


首をかしげるニックとノルベルト。


「まぁ、ナメられるよりは良いけど……、集まる?それ」


そしてガルネット。ニックとノルベルトの国は殴り合い交渉をすることが分かった。


「オレもそう思う。絶対にそんな悪魔戦大好き人間がいるとは思えないから、せいぜい5~6人位かなと思ってる。そもそも大量にこられても多分オレじゃあ制御出来ない」


『1人だったらどうする?』


「それもう隊じゃないよ。オレと合わせて遊撃コンビとか恥ずかしい」


頭のなかで何故かレッドカーペット上で漫才を始める遊撃コンビという名のお笑いイメージが浮かんだ。


「ハンター出身多そうだな。軍は統率力あるけど臨機応戦向かなさそうだし」


「逆にハンター個性強すぎるから纏められるのかという不安もある」


『カリアさんみたくしたら?』


「カリアさんかぁ」


確かにオレの中で一番参考になる人だ。全部真似は出来ないが、参考になる人がいるだけでも少しは気が楽になった。


「さて、俺達は次に行かねぇとな」


「俺的にはライハの遊撃隊に入ってみたい気もするけど、凄く残念だよ」


本気で残念そうなアレックス。実は此処に来る前にシラギク達から虎梟で手紙が来たのだ。内容はとんでもない魔方陣を発見したが、あまりにも複雑で自分達ではどうしようもないから助けて欲しい、とのこと。場所はウォルタリカとドルイプチェのちょうど国境付近。だいぶ進んだな。


「また会えるだろ」


「うわっと」


肩に二人分の腕が回された。二方向から。


「次会ったときがお前の最後だ。覚悟しておけよ」


右側でノルベルトが歯を剥き出す。


「お前なぁ、根に持ちすぎだって。そんなにアッチムイテホイに全敗したのが悔しいのか?」


左側からガルネット。


「悔しいに決まってんだろ!!二人に惨敗したんだぞ!!!」


「ハハハ……」


ノルベルトは素直過ぎるのかフェイントに引っ掛かりまくる。それが面白くて二人して繰り返したら火を着けたらしい。


「いつ出発?」


「明日だね。雪が酷いらしいから早めに動かないと」


「そうか」


「お前は?」


「オレも明日。制服作ったり、色々覚えることがあるらしい」


『ネコのもあるんだよ!』


「それはナイスだね!!」


使い魔にも区別の為、着用できるなら用意することができるらしい。


「じゃあ今日はこのメンバーでの最後の飲み会だな」


「だなぁ。次会う時まで、お互いの無事を祈って存分に楽しもう!!」







夜も更け、明日の事を考え早めに切り上げた。

首都は空が明るい。リオンスシャーレは湿度が少ない分、星が綺麗に見えるらしいのだが、明かりのせいであまり見えなかった。


この世界で飲みなれた茶酒でいい感じに酔い、フードの中で遊び疲れたピートンとネコを気遣ってゆっくり歩いていると。


「戦争終わったらどうすんだ?」


と、突然アレックスが問い掛けてきた。

戦争が終わったらか。


「そうだなぁ。いつも通りかな。ネコと仲間と旅をして、戦って、飲んで食べて、笑って。そんな日常に戻るよ」


「でも君確かすっごく遠い所から連れて来られたんだろ?家族の元には帰りたくないのかい?」


アレックスの言葉でハッとした。


「………………、うん。…さっきまですっかり忘れてたけど、帰りたくないわけじゃないけど、何だろうな。向こうもこっちも同じくらい気に入っちゃってるから今すぐには決められないや」


多分、どちらか片方しか叶わない。


「あ、でも突然だったからせめて元気にしてるって伝えたいな」


「……」


ラビが何か言いたそうにしていたが、口を閉ざした。


「まぁ、ゆっくり考えるさ。まずは戦争を早く終わらせないと」





□□□





「じゃあまたな」


「おう」


「無理すんなよ」


ニック達に手を振って見送る。考えてみれば見送るのは初めてかもしれない。

そんなことを考えながら隣のラビに。


「行かなくて良かったのか?」


と冗談混じりで訊ねたら。


「くどい」


と怒られた。


『行っちゃった…』


ネコが寂しそうにしていた。ピートンと仲良かったもんな。


「また会えるよ」


『うん…』


レンとイナリもフリーダンと共に北部で別れた。しばらく此処で神からの指令をこなすらしい。そういえば、ノノハラがフリーダンに弟子入りするなんて聞いて驚いた。元々魔法の才能はあったらしいから、案外治療系も合っていたりするかも。攻撃もできる医術師。強い。


「さて、じゃあオレ達もいくか」


灰馬を回収し、オレ達も宿を後にした。

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