第371話 治療

「ニックさ、ぶっ!!」


「うわっ、ごめん」


テントに入ったら入り口付近に立ってたノルベルトに衝突して弾き返された。入り口付近で立ち止まらないでください。


改めて中に入ると、ニックが起きていた。相変わらず顔色悪いけど。その周りにガルネット、アレックスが。


「来たのか?」


「?」


目的の人ってことかな?


「来ました」


「よし、これでお前のやつを治してやれる」


「いやまずは自分のを治せよ」


ラビが呆れた顔で入ってきた。魔方陣や薬などが沢山仕舞われた白いマントを身に纏い、すっかり此処の医術師として馴染んでいる。元々才能があったらしい。


「と言いたいところだけど、起きてるならちょうど良い。お客さんだ」


身体をずらしたラビの後ろから、先程見た精霊達が姿を現す。


「お久しぶりね、フォウ」


「お久しぶりです。フリーダン」


春の陽射しに似た濃い魔力を持つ女性。サグラマで会った元リベルターであった。最もあの時とは違い、紫を基調とした占い師の衣装ではなく、白を基調とした医術師の格好をしていたが。


「あとライハ君も。上に聞いたわ、これからよろしくね」


「よろしくお願いします」


『ネコも!ネコも!』


「お久しぶり、すっかり強くなったわね」


『えっへん!』


上というのは恐らく神様の事だ。既にオレが勇者になったのは知っているらしい。それにしてもニックの待ち人がフリーダンなら間違いなくニックは復活する。何せザラキとは違う方向で凄い魔法を使う人だ。


あ、ネコが言ってたのこれか。


「ぷぷっ。フォウ油断したわね。魔法返しされてるじゃない」


「油断した訳じゃないです。余裕が無かっただけです」


「攻めと守りを両方出来てこそ一人前なのよ。ささ、治療を始めるわ。巻き込まれるといけないから少しの間出てもらえるかしら?」


フリーダンがこちらを向いてそう言った。確かにこの狭いテントの中で巻き込まれるのは良くない。次々に出ていく。








しばらくするとフリーダンが出てきた。


「もう大丈夫、少しすると目が覚めるはずだから。それと、ライハくんも治すからこっちにおいで」


手招きをするフリーダン。予定ではニックに治してもらう筈だったけど、フリーダンはニックよりも強いし専門的だからそっちのが良いのかな。


(というより病み上がりのニックに魔法を使わせるのも酷だしな)


「じゃあ、ちょっと行ってくる」


「え、いいのか?ニックじゃなくて?」


「うん。この人は大丈夫。むしろ関係者みたいな感じだし」


「……わかった。何かあったら大声で呼べよ」


「りょーかい」


ラビが心配そうに見送る。それをアレックスが大丈夫だからと宥めていた。


オレの甲殻を治すには人目につくところは良くない。何より辛くて暴れるし、端から見たらどう見ても治療しているようには見えない。


「元気そうで良かったわ」


「フリーダンさんも。ニックさんを酷使ってすみません」


ふふ、とフリーダンが笑う。


「良いのよ、これも修行。魔術師ってのはより多くの経験をして、沢山の魔法を使えば使うほど強くなるの。ニックは貴方に会って悪魔と治療について結構勉強してたから、役に立てて良かったと思ってるわ」


「だったら嬉しいんですけどね」


甲殻出る度に申し訳ねぇって思っていたから。


『フリーダンの横にいる大きい子、凄く綺麗だね!名前あるの?』


フードの中でずっと機嫌が良かったネコがフリーダンの周りを浮遊する青色の氷が重なった様な精霊を見ながら言った。


ニックが元気がなくて落ち込んでるピートンを慰めてたネコだが、この精霊と一緒にピートンを慰めれば元気になるかもしれない、と。友達だもんな。


「レンって言うの。あともう一人いるから、仲良くしてくれる?」


『もちろん!!』


楽しみだー♪楽しみだー♪とネコの歌を聞きながらしばらく歩き、人がいない所まで来るとせっせと結界を張った。


「どれくらい広がってるの?」


「こんな感じです」


上着を脱ぐ。

ニックに言われて本当に加減しなかったので身体の1/4が甲殻に覆われている。


「………思った以上に深刻そうね」


「そうなんですよどうにかなりませんかね?」


「……うーん、コントロールできれば一番良いんだけど……。とにかく一回消してから話し合いましょう」


「お願いします」

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