第370話 再会
覆面生活四日目。そろそろ誤魔化すの難しくなってきた。
二日目までは酷い怪我痕で見せたくないとごねて逃げ回っていられたが、良い腕の医者に治してあげるから診せなさいと追い掛け回され、とうとう今日寝床に侵入され掛けたので逃亡した。本来治療してくれるはずのニックの魔力欠乏によるダウンがなかなか治らず、一度ラビに頼んでやってもらったが、効き目がいまいち。
しかもジワリジワリと広がっているので、ギリスで買った魔力を整えるとかなんとかの薬を一か八かで飲んでみると進行が止まったので、それを飲みながらニックの回復を待っている。
(ニックも中々の魔力量だよな。溜まるまでの時間が長い)
アレックスが魔力をニックにちょいちょい渡しているのだが、顔色がちっとも良くならない。オレの魔宝石で作られた腕輪を握らせてやると、真冬にカイロを手に入れたときのように両手に握り込んだ。気持ちはわかる。オレも前そうなったし。
『ひま。ひま。ひま。ひーま』
「分かっとるが動けんだろ」
『知ってる』
「もうあっち向いてほいでもしてよう」
『いいよー!』
早速尻尾を変形させて、じゃんけんを始めた。
ラビは治療に出掛けていて、アレックスとノルベルトとガルネットは見張りに行っている。
オレも行きたかったのだが、ラビとアレックスに「ニックが復活するまではNO!!!」と全力で言われた。
まぁ、ドルイプチェで酷い目にあったので仕方ないと言えよう。でも、それにしても暇。
魔法でも治すのが時間掛かる程の酷い怪我人は街へと搬送され、戦えるのはここに残ってキャンプをしている。ニックも搬送され掛けたが、何故か全力で抵抗したので残ってる。
何でも知り合いが来るから、来たら治るから、と言って待ってるらしい。
確かに街へと戻されたらオレ治せる人居なくなるし、オレも着いていけば安全確認と言って顔見られるし。今んところその誰かを待つしかない。
「?」
あっち向いてほいも飽きて、空中にいる精霊を集めて会話の練習をしていると、突然精霊達が同じ方向を気にして『来る』と口々に言い始めた。
『あ!』
耳をピンと立て、ネコが嬉しそうに目をキラキラさせ始めた。
「なに?どうしたん?」
『あの人が来たよ!ライハ会ったことあったでしょ!?』
「誰?」
『強い魔法が使えるあの人だよ!』
誰だ?
興奮しすぎて説明してくれるんだけどフワッとした特徴ばかりでわからない。強い魔法を使えるって言うと、ザラキくらいしか覚えかないのだが。
まさかルキオが大変なときにこんな真逆のリオンスシャーレに来るわけもないし。
目を凝らしてネコと同じ方向を見詰めていると、白い旗に青の菱形、角から棒が生えたマークが見えた。
あれって、もしかして国境渡りの医術師団か?
各国を練り歩きながら様々な医術や治療魔法を扱える人達が有事になると大きな団体になって活動することがある。それは国のお抱えの医者の一部も参加するので、いわば移動する病院そのものである。
「病院が来た」
『びょーいん?』
「治療院みたいなやつ」
しかもその中に気になる人物が混ざっていた。身体に色んな精霊を纏わせた不思議な気配をさせている人と、魔力の光が黒白関係なくバチバチ激しくはぜている人。
「あ、もしかして」
唐突に思い出した。
マテラのサグラマで、ニックに紹介された人。
そういえば西に行くとか言っていたわ。
すぐさま立ち上がり、ニックの元へと急いだ。
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