第五章 何の為に

第343話 次の地へ

「じゃあ、よろしく頼むな」


「任せてください!」


「無理は厳禁なんだぞ」


「分かってますよぅ」


スーパーノヴァは此処でまた二手に分かれる。

彼等はこうして世界を巡り、神からの指示を聞き、報告して、対処をする。いわば神の目となり耳となり動くパーティーである。

遣いがいるではないかと訊ねたところ、あれは観測者の手だと言われた。神から観測者へ指令が飛び、観測者の手となって遣いが動き、目と足になって情報を探る。

遣いは数少ない。現在はニックを入れても精々五人だ。


今回はニックの所にも神からオレと同じ指令が来ていたので行き先が重なっただけである。


「ラビィィィ!なんかあったらすぐに虎梟を飛ばすんやぞ!!すぐに兄ちゃん飛んでいってぶちのめすさかい!!」


「はいはい、兄貴も気ぃ付けてな」


後ろでスパニーア兄弟が別れの挨拶をしている。オレはラビにレーニォと一緒に行けばと言ったら、ラビに「マテラの男に二言は無い!」と逆に怒られた。


今回の班分けはこうなった。


リオンスシャーレ組。

ライハ、ラビ。

アレックス、ニック、ノルベルト、ガルネット。


南部周回組。

シラギク、カミーユ、デア、シェルム、レーニォ。


となった。

定期的に入れ替えることで連携を鍛えるらしい。何となく総員で何人なのかと訊ねたら、非戦闘員合わせて総勢13人いると言われた。多いな。


「おおお、すげぇ」


灰馬を取りに行ったら朱麗馬が三頭になっていた。確か朱麗馬乗っているのはノルベルトとガルネットだったが、残りは誰だ。


昨日騒ぎすぎて爆睡していたネコが起きて欠伸をすると、鼻を鳴らす。


『多分、美人さんの子だよ。甘い臭いするもん』


「デアさんか」


朱麗馬を乗り回すようには見えなかったが、人は見た目によらないな。特にここでは。


パーティーの話し合いが終わって皆やってくる。やはりデアが三頭目の朱麗馬の持ち主だった。


「じゃあ、お気を付けて!」


それぞれ自分の騎馬に乗り、出発した。

レーニォさんは見えなくなるまで手を振っていた。なんならこっちの班でも良かったのになと思ったが、レーニォはハルバートを使う戦士として前線で活躍しているらしく、こっちに入るとパワーバランスが崩れるらしい。


「一応俺が戦い方を教えてやったんだぜ!」


と、ノルベルト。


「乗馬はガルが。こいつこう見えてモントゴーラ出身だからな。めちゃくちゃ馬の扱いが上手いんだ」


「モントゴーラは歩く前から馬に乗せられるから」


「そうなんすか」


モントゴーラではケンタウルスとしか遭遇しなかったけどね、時間があったら営みを見てみたかった。


「次の街でいい駿馬がいたらラビのも買わねーとな。ずっとライハと二人のりだと狭いだろ」


ニックが振り返りながらそう言うと、ラビは苦笑いをする。


「実は、乗馬は苦手で…」


加減が分からない上に、視点が高くなるから怖いらしい。世話をするのは良いけれどもって感じ。おかげでオレの灰馬もレックスもネコも毛艶が良い。一度教えてもらったが、ブラッシングの技術がプロだった為、未だにネコとラビにダメ出しをされながら練習中だ。


「乗れると便利だぞ!逃げるときにも早いし!」


「ドルイプチェで捕まったときは逆に逃げられてたんだろ?」


「仕方ないさ、あの子は臆病な性格の子だったんだよ」


駿馬にも性格はある。

オレの灰馬がよく噛みつくのと同じように。最近はやっとデレ期に入ってくれて少し扱いやすくなったが。


「心配要らねーよ!ガルに丸一日特訓を受けりゃあすぐ乗れるようになる!」


「いったいどんな特訓なんですかねぇ?」


絶対にスパルタ式だ。


その証拠にノルベルトとガルネットが意味深に笑っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る