第330話 仲間と同士

「やっぱり巡回が激しくなってる。どうしよう」


アレックスはあの後なんとか逃げ切ることに成功していた。水と土の複合魔法を咄嗟に編み出し、泥の水溜まりを後方に作り出す事でスッ転ばせて足止めをしている内に全力で逃げたのだった。


そして、今、アレックスは宿屋の前の路地裏にいるが、その宿の前には巡回兵がうろうろしている。


荷物とネコと駿馬達を回収したかったのだが、強行突破は自らの異に反する。


「アレックスゥーン♪ふっ」


「ひぃやああ!!?」


突然耳に吹き掛けられたアレックスの首筋から背中に掛けて凄まじい鳥肌が立った。


「バカなにしてんだ、見付かるだろうが」


「あんっ!もういたいじゃないの~。ラビちゃんの暴力はんたーい」


「………カミーユ…」


布を捲るように姿を表した二人の内、ラビではない方を見てアレックスの目が座った。美しい白銀の長髪に紫色の瞳は長い睫毛に縁取られ、ラビに叩かれた所を擦りながらアレックスに笑顔を向けていた。


「アレックス、無事で良かったわぁー。もう心配で心配で堪らなかったのよ」


「はいはい。てか、なんでラビと一緒に居たんだい?」


冷たい視線も最高と言いながらハアハアしている変態を無視して、アレックスはラビに質問をした。ラビは言いにくそうに頭を掻く。


「えーと、実は少し前にナンパして知り合った同士仲間」


「………………もしかして、アランドン街で盗賊に引き渡そうとした事件かい?」


「………それです」


「……そうか。てか、君はなんでここにいるんだ。パルジューナで落ち合うって話は?」


「だぁーかぁーら、心配で引き返してきたのよ。ほら、アレックスって銃無いとそんなに強くないじゃない?」


「君がそれ言うのかい」


「だってわたしか弱いもーん」


「…………」


「待ってよそんな見下した目で鼻で笑わないで、コーフンするでしょ」


「黙れド変態」


そんな二人の様子を見ていたラヴィーノが二人の間に体を割り込ませた。


「仲間に会えて嬉しいのは分かるが、後にしてくれ。俺は早く荷物諸々を回収してライハと合流しないといけないんだよ」


「そうだったわね」


よっこいしょ、とカミーユが立ち上がる。ただでさえ身長が180あるのに、ピンヒールを履いているせいで10センチプラスで威圧感が半端ない。


「ほらほら、ラビちゃん行くわよ」


「はいよ、カミュ姉さん」


カミーユはラビに素早く指示を出すと、二人は同時に姿を消した。

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