第310話 先を行く
おい嘘だろ、との声があちらこちらから上がっている。現在、街の門前には人だかりができていた。その中心にいるのはオレとアレックスとネコだ。
どうにかしてここまで運んできたはいいが、流石にそこからは目立つらしく、あっという間に取り囲まれてしまった。
スパイクスネークモドキがでかすぎて街の門に入れなかったのが原因です。
どうやって運んだかって?
オレの身体能力向上で引きずってネコが尻尾で抱えて頑張ってました。
明日は筋肉痛。
アレックスにはオレ達の荷物灰馬含めて全部持たせた。
「本当に二人でやったのですか?」
しかしギルド長に疑われている。
当然だろう。討伐隊全滅なのに二人で狩ってしまったらそんな反応になるのもわかる。
しかし、ハンター登録証を見せたら納得してくれてよかった。アレックスも、スーパーノヴァのリーダーが顔ボヤけた状態だと偽装の疑いがあるかもしれないと、意識逸らしの魔方陣をひっぺがしておいて正解だった。
オレが交渉役でギルド長に説明をする。
アレックスがこういうのは向かないと押し付けられたのが原因だが。
そんな感じで、退治方法をサクッと大雑把に説明した後、オレ達だけの手柄ではないと加えた。
「元々、昨日の今日で回復しきれなかったところを突いたので、それで討伐できたようなものです。なのでこのルツァで手に入るお金は生き残った討伐隊の人と、亡くなられた方の供養のために使ってください」
お金は狩ればなんとかなる。
それよりもお願いしたいことがあった。
「本当に良いのですか?ありがとうございます…」
「その代わりなんですが、お願いを訊いてくれませんか?」
「なんでしょう?」
「南の方で悪魔の襲撃の被害が酷いので、もし、避難してきた方たちがいたら、全力で支援してほしいのです」
オレの要求が予想外だったのか目を見開いたギルド長。
前の戦争でもそうだが、難民の受け入れはするものの、基本的には街の中に入れず、森の中にキャンプをしているのが現状だ。安全な街の中とは違い、常に危険にさらされ、流行り病で死ぬ人も大勢いたと聞いた。
アレックスにも事前に相談していたのだが、オレの考えには賛成してくれた。
今回の襲撃でどのくらいの人が逃げてくるかは分からないが、できる限りは手助けしたい。
「俺からもお願いだ」
アレックスもやって来て頼むと、ギルド長は分かりましたと微笑んだ。
「でしたら、今夜は宴を開かせてくれませんか?お酒も肉も、女も呼んで豪勢にしますから」
一瞬“肉”の単語に反応仕掛けたアレックスだが、それよりも先に進まないといけないと分かってるからかグッと我慢していた。
「申し出は大変嬉しいのですが、急いでますので、お気持ちだけ頂戴いたします」
ションボリとギルド長が肩を落とすのがわかり申し訳ない。
「……保存食だけ譲って頂けたら嬉しいのですが、お願いしてもよろしいですか?」
なので、そう提案したら顔を明るくしてくれた。ギルド長がよい物を大量にくれるらしい。それを聞いてアレックスも目が光輝いていた。
とんでもない量の食料を詰め込んだ鞄を笑顔で背負いながらアレックスが鼻唄を歌っている。
しかも、どうかこれだけでも貰ってくださいと、高級な肉まで貰った。
「やっぱり人助けは良いんだぞ!」
「これでしばらくは街に寄らなくても良いし。でも、溢れた魔物は狩るからね」
「そこは勿論だよ!」
『早くお昼にならないかな~』
アレックスに合わせて駿馬を引きつつパルジューナへと向かう。途中、川や山に森なんかもあるけど、そこはあえて避けずにいく。
理由としては、通りすがりの森に裂目があるらしい。そいつを塞ぎつつ行こうという感じだ。
スマホからはまだ何の指令もないので、きっとアレックスと行動しろということなのかと思っている。それにしても南の状況が気になる。
スマホの地図を見ても、裂目の変化はあれど、あれから不明な魔方陣の出現はしていない。
「連絡手段が欲しいな」
電話とか、そうしたらこんなにモヤモヤしないで済むのに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます