第306話 ジャスティスとネコと.2
俺も駿馬が欲しいと隣で走るアレックスがぼやく。だが、君、韋駄天でオレの灰馬と同じ速度で走ってるじゃないか。
灰馬がおい嘘だろと言う顔でチラチラとアレックスを見ている。気持ちはわかる。
『端から見たら走り方気持ち悪い』
「なんだと!?とってもクールじゃないか!」
「ネコ、こういうのはとってもシュールというんだ」
『端から見たらとってもシュール』
「君も変な言葉を教えないでくれよ!」
でも実際駿馬と並走しているのをリアルで見ると、そんな感想しか出てこない。
効果だけ見たら、なにそれすげえ!!ってなったのに。実際見るとなんか違った。
あれだよ、競馬場で全速力の馬と同じ速度で走る人間を見ているような変な気持ちになる。
「仕方ないだろ、君の駿馬が拒否したんだから!」
「それは謝る」
そもそもこうなったのは、灰馬がアレックスを乗せるのを嫌がったから。
イヴァンは細身だから平気だったが、アレックスは体格がそこそこ良い。そして荷物乗っけてオレも乗るとなると流石に灰馬も無理なんだろう。
なら走るしかないじゃないか!となったらしい。
それにしても、朱麗馬並みと言うのは比喩ではなかった。本気ではないにしろこの灰馬についてくるなんてヤバイ。
しかし、この速度だからこそレイライン川に辿り着くのもすぐだ。
「!!?」
慌てて灰馬を方向転換させる。
「どうしたんだい?」
アレックスがブレーキを掛けて戻ってきた。
地面に人の足が転がっていた。足だけ。惨い。
本体は何処だと探してみると、あちこちに剣や鎧が落ちている。そして草には茶色に変色した血液が広範囲で飛び散っていた。
ここで戦闘があったのか。
「おおぅ、スプラッタ…」
そして地面には何か重いものを引き摺った跡と幹にへこんだ跡。爪で引っ掻いたような跡もなく、一つ気になるのは万力で挟んだのかと思うような幹のへし折られ方だ。
どうしたらこうなるのか。
「ヘイ!ヘイ!こっち来てみろ!」
「なに?」
アレックスに呼ばれ行ってみると、何かの棘を持ってきた。金属のようだが、先にいくにつれ禍々しい紫色に変わっている。しかも全体的にマーブルが掛かったように薄く色が変化しているのは何だろう。
「これ、ノコギリみたいな感じになっていて、試しに木に当てて引いたら伐れたよ!しかも向こうに木についた跡とそっくりの傷を付けた死体を見付けたんだぞ!」
「うへぇ、これ武器なのか」
ぶつかると地面や幹ががへこみ、万力のようにへし折り、棘をがついていて且つノコギリの様に斬れる。
しかし今のところ毛などは落ちていないことから、爬虫類系だろうか。
『生臭い』
そんでもって、生臭い、と。血の臭いかと訊ねたら違うと言われた。
確か警備兵から聞いた討伐隊のランクは平均E。だが、総勢34人だから、人数でカバーできるはずだ。シルカでもルツァ複数をカリアとキリコが混ざっていたとはいえ、死者は出なかったはず。とすると、厄介な能力を持っているとか。
『!』
ネコが突然耳を立て、オレもそれに気がついた。
でかいのが来る。
「逃げてろ、事が終わったら指笛で呼ぶから、それまでは身を隠しとけ。身に危険があったら攻撃して逃げろ」
灰馬が小さく首を振って去っていく。
アイツは賢いし運が強いから大丈夫だろう。その証拠に、音がする反対方向へ本気で走っていってたし。
「アレックス、ネコ」
「ああ、分かってるよ」
『さあこい!』
ジャスティスを取り出して、笑顔を浮かべるアレックス。オレは弓を取り出して即攻撃が出来るように矢をつがえた。
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