第303話 実験をしよう
さて、ここドルイプチェ国は職人の国とも言われる。理由としては剣士が多く、その為の鍛冶職人や鎧職人が自然と集まってくるからだ。ちなみにここは素晴らしい剣を作ることで有名で、二大刀剣の一つ、ドルイソードの輸出国でもある。もう一つは聞いたことかあるだろうコーワ刀だ。
特徴としては、コーワ刀はあり得ない程のしなりと切れ味で撫で切るのに対し、ドルイソードは盾かよ!と突っ込みを入れたくなるほどの硬度と頑丈さで、使い手次第ではハンマーを真正面から切る事が出来るらしい。頭おかしいよね。
そんな感じで、武器が傷んだらここで直せば間違いないと言われているし、むしろここの武器を買え!と宣伝される。
しかし、既に武器を持っているオレとアレックスには関係ない。精々弾を買うくらいだ。あとはアレックスの服か。オレのでは少しキツかったと言っていた。
オレも灰馬にやる褒美の餌と、銃弾、保存食を購入し、山越えの為のスパイクを売った。そして弓矢も補充。
『どこ行くの?』
「魔法の試し撃ちをね、街の端の方に訓練用の森が残っているらしい」
「こういう訓練がしやすいのが良いところだよね!街の外はクソだけど!」
外に行こうとしたら、日がそろそろ暮れるのでダメと言われた。なんでも最近森の中でルツァ級の魔物を見付けたらしい。
なんなら討伐に行っても良かったのだが、依頼は既に締め切りされていて、討伐隊の帰りを待っているのだと。
最近大規模戦闘してないからか、少し物足りない。完全に毒されているのは理解しています。
なので、あまり人が来ない訓練所を教えてもらい、そこに向かっているというわけです。まずはこの新たな神具の調子をみないと、効果が効果なだけに気を付けないといけないから。
「よーし!ジャスティス!新たな弾の具合を教えてくれよ!」
ジャスティスと名前を付けられた銃を持って、アレックスが走っていった。日が暮れたら、森の入り口に集合と言っておいたのでしばらくは自由行動だ。
「まずはどれからいこうかな。狂い時計にするか」
『何これ』
「物の時間を早くしたり遅くしたりするやつ。あの花で良いかな」
適当な花を見付け、狂い時計を手にする。形は普通の懐中時計だが、指針がたくさんある。
そのうちの一つは普通の時刻を指していて、その隣には早めるやつ。反対側には遅くするやつ。狙った花に意識を集中して、時間を加速させた。
途端、魔力が吸いとられていき、加速の指針がグルグル回転し始める。すると、テレビの何倍速みたいな感じで成長し花が咲き萎んで枯れた。
「予想以上に早いんだけど」
『あ、花が粉になった』
「危険だなこれ」
止めた。
風化するのに約三秒。
とられた魔力はごっそり。これは練習が必要だ。
逆に遅くするやつは上手くいった。落下中の落ち葉に狙いをつけたら、一秒が一分に。
しかしこっちの方が魔力消費が激しく、どんなに頑張っても一分が限界。
解除した瞬間襲いかかる疲労感。
これも練習が必要である。
続いて
一つは弓に、もう一つは首に下げる。矢を取り出しつがえ、魔力を籠めてみた。
「取り合えず、近場に射ってみよう。……てか、オレの呪いはどう作用するんだろう。怖いな」
ニメートル先の幹に射って、首から下げた方に魔力を流すと、体がフワッとしたなんとも言えない感覚に包まれ、景色が変わった。
「ん?あれ?」
目の前には幹に突き刺さった矢。後ろを振り替えると猫が驚いた顔で見ていた。
「オレどんなだった?」
『なんか一瞬光って消えたよ!ピカッて!で!気が付いたらそっちにいたよ!!』
体を調べるも特に変化はない。
呪いは作用しないようだ。
よかった。ちょっと怖かったんだよね。
そのあと、ネコと一緒に移動したり、色々実験をしてみて使い方が段々分かってきた。
これは思っていた以上に使い勝手がいい。
そして、ついでに手に巻き付けて放置していた“暴食の主”の神具の実験もしてみた。腕に巻いてあると特に何も起こらなかったのが、地面において、矢を近付けると、紐の輪になっている箇所に吸い込まれた。見た目は地面だが、吸い込まれた瞬間そこに穴があるような感覚に陥った。
試しに魔法を撃ってみても何もない。
だが、手で持った状態でやると何故か魔法を吸い込む。矢は素通り。腕に巻いた状態でやったらオレの腕に直撃して痛かった。
そしてもっとも不思議なのが、矢に巻いて、実験の途中折れた矢に近付けると、鏃側から折れた矢が吸い込まれた。
何か細かい条件があるらしいが、全て解明出来なかった。仕方がない。少しずつ解き明かしていこう。
ちょうど日が落ちてきてアレックスが戻ってきた。
「おーい!腹へったぞ!何か食べに行こう!!」
「来る途中美味しそうな店があったからそこに行こう」
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