第270話 山之都.1

その後は特に何もなく夕方までぶらぶらして戻ってきたら、開口一番戻ってきていたカリアに。


「昼間でっかい雷が落ちてたけど、あんた何かやったでしょう」


と、言われた。

不可抗力だったんです。


翌日、キリコが朝早く宿を出て仕立て屋に向かい、早速防護服を取りに行った。


「見て見て!これ!前のよりもだいぶ強くなってるわ!!」


大はしゃぎのキリコは相当嬉しかったのか細かく防護服の追加された機能を説明し始めた。何でも今回のお詫びとかで、装飾や防御力に力を入れてくれたんだとか。最近ついていなかったキリコは、これでチャラだと喜んでいた。

良かった良かった。


幸いあの後刺客が来ることは無く、無事出発することができた。ギルドにも街を出るからと顔を度したのだが、アーニャはまた出掛けていて、残念だった。


灰馬を走らせながら、みんなで一口 コロッケを食べる。

これでこの美味い野菜ともお別れか。


「次は山之都ね、親父さん元気にしてるかしら」


「してるんじゃない?多分いつもみたいに飛び回ってるわよ」


「知り合いがいるんですか?」


「うん、鴉天狗族にだけど、気のいい人よ」


山之都の住人は半分以上が有翼人種だ。その為建物が木上に作られ、不思議な景色を作り上げている。そういえばジュノの獣人ガラージャ達も建物は木上に作られていたが、獣人ガラージャはそういう習性でもあるのだろうか?


山道を黙々と歩いていく。


特に灰馬はルキオの山で迷子になった経験があるからか、歩き方が少し違う。それを見て他の駿馬も真似し始めたので、馬も人間みたいに見て学習するんだなとホッコリした。


道は狭いが、最低限の手入れをされており、長い吊り橋も三角が連続で並んだ様な模様の飾り彫りがされていた。


途中霧が出たが、それでも問題なくどんどん山を登っていき。


「見えた!大羽根門よ!」


木々の間から広げた翼をイメージしたような門が現れたのだった。



着いて思ったのは、戦の後のような雰囲気だった。


何処かしら気だるげな、悲観的な物もあれば、やりきったという物もある。門で入国手続きを行い、長い階段を登っていく。何メートルもの大木の上に木造建築が縦横無尽に広がりを見せ、そこを黒と青と緑が混ざったような光沢を持つ髪の人達が翼を広げ飛び交っている。その内の半分が何処かしら怪我をしたのか包帯のようなものを巻いていた。


そして、臭いも、森の臭いと共に血生臭いような物が混ざっていた。


「なんだろう」


普通じゃない雰囲気にアウソが辺りを見回す。


「早いところ、クウカクの所へ行こう」

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