第223話 フエルィ長老の苦悩
エルトゥフの長老、フエルィは悩んでいた。
目の前に並ぶのは今回訪ねてきた人間からの贈り物の石飾り。
石飾りに使われる石には余程悪質なものでない限り純粋な魔力が込められている。
今回手元に来たのは合わせて3つ。
うち、1つはルキオの人が助けてくれと対価として差し上げてきたものだった。だが、それは対価としてはとても重く、貴重なものだった。
一時はそれで了承をしたものの、後々改めて考えると対価としては釣り合ってないようにも見える。
そもそもあの人間達は亀裂を塞ぎに来た。
しかし、そこまでの道中悪魔と交戦して、その最後の敵があまりにも強く手に終えないといって助けを求めてきた。
こちらとしては、何を悪魔ごときと侮っていたが。いや、まさかあんなのがいるとは思わなかった。
せいぜい人の形に似た魔物程だろうと思っていたら、あれは前の大戦でも犠牲者を多く出すほどの強さだった。それをあの人間達はたったの四人であそこまで疲弊させていた。
魔物がウジャウジャと沸いてくるのは、精霊と共に戦えば何ともないが、あれは戴けない。
よく誰も死ななかったものよ。
森は燃えたがな。あれは仕方がない。
むしろあの程度で済んで良かったと思うべきか。
いや、そういえばウンディーネが一度消されたな。
ウンディーネは水の精霊が形を成したもの。一度消されれば戻るまでに大変な時間を
いや、そもそも悪魔に気付かずにたかが魔物と思っていたところに攻撃を喰らわされておればエルトゥフは終わりではなかったか?
指を折り、貸し借りを数えていたが、フエルィはしばらくするとそれを止め、部屋を見渡した。
部屋にはこのエルトゥフの森で生きる精霊が集まってきていた。もっとも、
フエルィは壁にもたれ掛かると、一つ息を吐く。
何となく察してはいた。
精霊の話も踏まえ、今回の出来事も重ねて、フエルィは次の人魔大戦が近いことを肌で感じ取っていた。
「………こうなると、貸し借りなぞ考えず、ただ感じるままに選択した方が良いかな」
フエルィの言葉に精霊達は瞬く。
目を細め精霊の言葉を聞いていると、突如バタンと勢いよく扉が開かれて精霊達が驚き消えてしまった。
クアブだった。
昨日は常に真っ赤にしていた顔を、今日は青くしてクアブは口を開いた。
「長老!!村の水が!!」
さて、まだ騒動は収まりそうもない。
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