第214話 エルトゥフの森での攻防.21
『邪魔をするなぁああ!!!』
リューシュが怒り狂い、拳を振り上げる。
しかしその拳はもう一体のゴーレムによって受け止められる。
「ウンディーネ!!お願い!!」
クユーシーがそう言うとウンディーネは頷き、両腕を広げて空を仰ぐ。するとウンディーネの周りに蛍のように光る精霊、風の精霊が渦巻きウンディーネの体から放出される霧をマグマの方へと運んでいく。
何をしているんだ?
「おのれええええええええええええ!!!!」
突然の怒声に驚き、声の発生源を探すと、リューシュの攻撃を防いでいるゴーレムの頭付近でクアブが耳まで真っ赤にさせて激怒していた。肩には長老も乗っていて、頭で地団駄を踏むクアブを心配そうに眺めていた。
「我々の神聖な森を焼き!!!木を切り!!土を溶かすなど!!!万死に値する!!!!ゆけ!!!精霊達よ!!!やつを灰にして、森の肥やしにしてくれる!!!!」
クアブが雄叫びを上げた。
だが、オレ達三人と一匹は「木を切り」の時に黙って視線を逸らした。自発的に切ってはいないけど、滅茶苦茶使い勝手の良い道具にしてました。ごめんなさい。
「怪我は!?」
アウソとクユーシーがゴーレムから降りてきて駆け寄る。
「ライハは額を割って」
「あ、大丈夫です。オレのはもう止まってます」
「それ以外は師匠が足を火傷してるわ」
クユーシーの顔が青ざめている。
体が小さく震えているのを見るや、人の血や怪我に慣れていないのだろう。
「カリアさん、失礼します」
アウソが水袋からカリアの火傷の場所に少しずつ水を掛ける。それを見てようやくクユーシーもキリコの怪我を診て手当てを始めた。
その間、他のエルトゥフ達も次々にゴーレムから降り、辺りの地面や木に何かのマークが描かれた紙を設置している。
魔方陣とはまた違う。
『ライハ、ライハ』
ネコが興奮した様子でやって来た。
でかい図体がぶつかりよろけつつ、ネコが尻尾を使って上を指す。
『空を見てみろ、凄いことになってるぞ!』
「空?」
空を見て驚いた。
様々な色の蛍の光が空一杯に飛び交い、マグマの赤と、ウンディーネの水が混じり合い、その影響なのか雲が発生していた。
しかもその雲は黒く、重く、すぐにでも大雨を降らせそうな雨雲で、精霊達の働きによってどんどんと空を覆い尽くしていく。
その様子を長老は穏やかな表情で眺めながら、手にした杖をリューシュへと向けた。
ゴーレムが動く。
リューシュが叫びながら口から閃光を放つも、すぐさまゴーレムの正面に水色の光と共に透明な壁のようなものが形成され、閃光を飲み込み閉じ込めて消し去った。透明な壁の周りにも精霊がいるが、見たことのない精霊だ。
その間にも雲はどんどん成長し、遂には空一面黒い雲が埋め尽くした。
「精霊って凄いんだな…」
思わずポツリと溢した。
それに反応するように、空から風の精霊が一つ降りてきて嬉しそうに点滅しながら一回りすると、また空へと上っていった。
「それにしても、村の守りに徹していた長老を引きずり出してくるなんて。お手柄よ、アウソ」
「俺の持てるだけのコネを使いました。…まぁ、これしかできんかったけど」
「何言ってるよ、お陰で助かった」
「実際本気で終わったと思ったしな」
今回だけで何回死んだと思ったか。
軽く5回は「あ、死んだ」と心の中で呟いたからな。
今生きてるのが奇跡だ。
「いくぞ!全力で呼べ!!」
エルトゥフ達が空を見ながら聞いたことのない言葉を歌うように紡いでいく。
その言葉は、優しく語り掛ける口調から、次第に激しく荒々しく、叫ぶようなものに変わっていく。それに反応してか、精霊達の動きが激しくなり、雲に稲妻が走り始めた。
『!!』
蛇の頭、リューシュが空を見上げ、苛立ちを露にした。
ゴーレムは壁のようにそこから動かず、攻撃を全て受け止め。長老が氷の精霊を使ってビームの様なものを無効化した。しかし消耗が激しいらしく既に息切れをしている。
長くは持たない。
(早く雨降れ…)
そう願いつつリューシュを見ると、違和感を感じた。
なんだ?何がおかしい?
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