第200話 エルトゥフの森での攻防.7

ん?と、オレは目を細めてそれを見た。

チハは驚異的な回復力の持ち主である。どんなに上半身をぶっとばそうと瞬く間に再生する程の。


だが、先程カリアに切断された蜘蛛の脚や牙に手間取っている様子。


それどころか、苦し気な声すら聞こえる。


(これは、もしかして)


カリアと顔を見合わせた。


「今何考えてるか当てようか?」


「多分ですけど、同じ考えですよ。アレに似てますよね」


「アレね、試しに答え合わせしてみる?」


「いいですよ」


「せーのっ」


「「歩茸マタンゴ」」


・マタンゴ、別名歩き茸。

茸を背負った蜘蛛のような生き物である。

背中の茸は餌を呼び寄せる為の囮で、いくら壊されても本体にダメージはない。

退治するには根元の本体をきちんと攻撃することが大事。










一瞬で脚の半分近くと牙を切断された為に回復にもたつくチハは焦っていた。


背中の人形はどんなに破壊されても再生できる。

その気になれば瞬時に復元することも可能だが、本体は別だ。


チハは他の仲間よりも頭をよく使い、人蜘蛛アラクネ族のように振る舞ってここまでのしあがってきた。


不死身のチハ。

周りにそう呼ばれることもあった。


今回もちゃんと偽装して、同族すらまんまと騙せた。だけど思ったよりもしつこいし強かったから焦りがあったのかもしれない。


人間だから舐めていて、足止めの策が雑だったからだろうか。


本体を攻撃されてしまった。


はやく、はやく、はやく!!


早く擬態しなければと思うが、焦る反面うまく再生しない。


『!』


そんなチハに影が二つ落ちた。


「やっぱりこっちが本体か」


「どーりでどんなに破壊してもニョキニョキ生えてくると思ったよ」


チハが見上げると、二体の鬼がいた。

黒鬼と青鬼。


二体はそれぞれ黒い棒と白い剣を担ぎ、こちらを見下ろしてニヤリと笑みを浮かべた。


鬼族に慈悲など無い。


一体は人間なのに鬼にしか見えないのは、既にチハが恐怖に飲まれていたからである。


「さてと、それではそろそろ」


「覚悟するよ」


あまりの恐怖にチハは攻撃が当たる前に意識を手放した。













しっかりチハに止めを刺し、きちんと死んでる事を確認してからキリコ達の様子を見た。


「ウラウラウラ!!!」


「まだ駄目か!?もっとか!?」


キリコとアウソが火の海の中で、黒い石のような物を全力で砕いていた。


何してるの?

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