第186話 せっかくなので気配察知の修行をしている
そろそろこの餅と鍋料理にお別れかと名残惜しく思いながら、三週間掛けてピーズフィプ山からウォーロー国境近くまで移動してきた。
その際、刺客と思わしき者の襲撃、13回。
よくわからない強い魔物との戦闘5回。
「いい加減慣れてきた自分が怖い」
「最初だけよ、激しいのは。そのうち落ち着いてくるから」
「頑張って生き残ります」
裏の手配書の先輩からのアドバイスを受け、オレは前向きに考えることにした。
せっかくなので、この襲撃を使って気配察知の修行をしようと。
でもお陰さまでだいぶコツ的な物は分かってきた気がする。
視線を感じると、視線を受けている所が微かにチリチリというか、ムズ痒く感じるのだ。
その事を言えば、カリアがそれは罠を関知するときにも役に立つから磨いておくよと言われた。獣時代の獲物察知能力と合わせて使うととても良い能力になるかもしれない。
「俺はあんまそういうの分からんからな。羨ましいさ」
若干アウソがふて腐れぎみに言う。
こういう能力は個人差があって、何が自分に合っていて、成長出来るかもわからない。
「オレはアウソの交渉能力凄いと思ってんだけど。色んな言葉喋れるし、どうしたら円滑に交渉できるかを知っている。オレは無理」
現にオレに殺意バリバリな奴がたくさんいる。
違うか、国単位でいる。
「そ、れは、ありがとう。うおお、嬉しいな褒められるの」
「何よアタシだってたまに褒めてるじゃない」
「キリコさんの褒める時は説教中とか、戦闘中とか、切羽詰まった状況下とかだから違うことも考えながらだから噛み締められなくて実感わかんさ」
「…何も言い返せないのが悔しいわ」
キリコが反省している。珍しい。
「そろそろつくよ。三人とも準備は大丈夫?」
「いつも通りよ」
「魔力消します」
『気配消しますー』
ネコと練習通りに魔力オフ。ネコは仔猫サイズで斜め掛け鞄の中へ。万が一見付かっても出来るだけ無害アピールをする。そして何も喋れないのは不憫なので、隠れて尾をオレの体の一部と融合。そこから会話やら、音や景色を送る。
アウソも贈り物の酒と石飾りを確認して大丈夫と合図をすると、眼前に見えてきた高い山ーー山脈かもしれないーーの麓に広がる森、エルトゥフの森へと足を踏み入れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます