第178話 悪魔の力

転倒しながらも骨を避け終え見た先、カリアの放った蹴りが黒い物体によって防がれていた。


「チィ!」


反撃に移ろうとした悪魔の動きを察知したカリアが飛び退く。そこに触手が勢い良く振られたが、空振りした。


『ほらほらどうした?またあれやっちゃうよ!』


パカリと悪魔が口を開けた。

すぐさまその口目掛けて雷の矢を射つ。


黒い物体が悪魔と矢の間に割って入り、攻撃を妨害した。矢は黒い物体に吸い込まれ、白い煙と共に消えた。


『!』


悪魔が驚いた様にこちらを向く。


『お前…、ーーあ"あ!!』


悪魔が苦痛に顔を歪ませ、すかさず後ろを向いて口から見えない何かを発射した。アウソが受け流さずに全力でその攻撃から逃げる。地面には銃創に似た穴が開いていた。


何を撃ったんだ?


「あ!」


悪魔の触手が二本ほど途中で無くなっている。

アウソがこちらまで逃げてきて、槍を悪魔に構えた。


「ビックリした、あんなに硬かったのに突然斬れるんだもんよ」


「元々硬いわけじゃないのかな」


だとしたら、意識を触手から逸らさせる事ができれば、あの防御を無効化できるかもしれない。それにしても、アウソはあんな状態でも攻撃続けていたのか。


触手が再生する素振りはない。

漫画のように突然治るわけじゃなくって良かった。


悪魔がオレを指差し、怒ったように眉を吊り上げた。


『なんでお前がそちらに加担している!?お前はーー、!!』


悪魔が慌てて触手を前方に集めると、その触手にボウガンの矢が突き刺さった。更に矢が雨のように飛んできて、悪魔は歯を食い縛りながら防御に徹する。後ろを見ると、キリコがボウガンを放ち続けていた。


それはもう反撃の隙を与えない程に。


「なんか良くわからんが、ライハの矢が当たれば黒い水は消えるみたいだ。また出たら頼んだ」


「任せろ」


悪魔の言葉の続きは気になるが、今は攻撃に徹しよう。


カリアがアウソに合わせて攻撃を仕掛けた。

挟み撃ちでの攻撃は悪魔にとってなんともやりにくいようで、攻撃に全ての触手を費やせば、キリコの矢の雨が降り、口を開けて音を出そうとしたり、黒い物体を使おうとすればすかさずオレが雷の矢を射ち込んで強制キャンセルさせた。


そうしている内に触手が更に一つ無くなった。


『~~~~っ!!! 舐めるな!!!』


怒り狂った悪魔から魔力が溢れ出し、あっという間に四人を呑み込む。


「ゴポ…、!!?」


突然視界が暗くなり、景色が歪んだと思ったら、水の中に放り込まれていた。

呼吸は出来ず、口を開ければ空気が気泡となって逃げていく。黒い水は、この空間一杯に広がっていて空気のある場所が分からない。


骨の山も水の浮力で浮き上がり、視界を遮る。


咄嗟に粒子モードに切り替えると、向こうの方から悪魔が高速でやって来ていた。


『キャハハハ!!』


身をくねらせてやって来た悪魔の手には、キリコの矢。こいつ、これで攻撃してくる気か。


「!」


矢が到達する寸前、目の前にアウソが割り込んで悪魔の胴に槍を突き出した。突然の攻撃に反応が間に合わなかった悪魔の胴に槍の刃が掠めた。槍の動きが蛇のようだ。


アウソは水の中で器用に槍を振るい悪魔の攻撃を全て弾く。


悪魔は水の抵抗がないかのような動きをするアウソに舌打ちをすると、来たときと同じように高速で去っていく。

それを追い掛けようとするアウソがこちらに向かって手を動かした。

ハズデ手語だった。


《キリコさんがもたない。カリアさんと俺が奴の動きを止めておくから、さっきの黒い水を消し飛ばしたみたいに雷で何とかできないかガンバってくれ》


そうしてアウソは悪魔を追って消えていった。


何とかって!さっきのとは状況が違う。

だいたい水と雷の相性は悪い。下手したらみんな感電死だ。


「ガボッ…」


だが、もうオレも息が限界だ。

なんでさっき黒い水が消えたのか分からない。

魔法だったから何かを反転して消したのかも良く分からないし、もう苦しすぎて頭が白くなる!!


駄目元で大量の魔力を腕に集め、上手くいくか分からないができるだけ仲間に被害がいかないよう操作。そして、何かの魔法を反転できるならばと、範囲を広範囲に、先を針のように細くなるようにイメージをしながら、オレは全力で雷を放出した。

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