第146話 久し振りの狩り

馬をジャンケンで負け、不貞腐れたキリコに預けて森に入っていく時にネコがこんなことを言い出した。


『ネコも狩りしたい』


最近ずっと移動ばかりで体を動かしたいのかね。


「じゃあ小物探さないとね」


カリアがそう言うと、ネコは首を横に振る。

すると、突然ネコが巨大化し一気に虎サイズに。


『今日はこれでデカイの倒す!』


「オマエの万能さは何なんだよ」


この分だとその内像サイズにでもなりそうだ。



しばらく行くと猪(イノシシ)型の魔物(マヌムン)がいた。ネコよりも一回り大きい。

雑食性で牙が八本生えていて、二重猪(フタエイノシシ)という。主に華宝国、煌和(コーワ)国、ビャッカ諸国、あとマテラの北部によくいる。美味いらしい。


「ネコ、あれ倒す?」


『うん』


頷きながら尻尾の先を小さく振っている。すでにやる気マンマンな模様。


「いってらー」


手を振って見送る。


ネコが姿勢を低くしながら近付いていく。ゆっくりゆっくり、思わずこちらも固唾を飲む。ネコは二重猪のすぐ側まで近付き、次の瞬間。


『ガァアアッ!!』


ネコは低い位置から飛び出し、驚いた二重猪の首に食らい付いた。逃げようと二重猪は暴れようとするが、ネコは両前肢の爪をしっかり立てて逃げられないように固定している。


そして。


『獲ってきたよー!!』


ネコが嬉しそうに二重猪を銜(くわ)えて持ってきた。余裕だったな。


「じゃあそれはキリコの所に持っていって、次いくよ」






次に見付けたのは魔狼の群れだ。

魔狼は良い。何処にでもいるし一回の狩りで五~六頭は獲れる上に何より全てが素材になる。肉は干さないと食べれないけど、味は悪くない。

今回、カリアとネコは待機し、オレとアウソで狩る。


「じゃあオレ援護するから、陽動よろしく」


「任せろ」


近くの木に登り気配を消していく。

獣時期の記憶が戻ったときに出来ることが一気に増えた。気配を薄くするのはその一つだ。


視線の先には十六頭程の群れ。アウソはそこに近付き、茂みのなかに身を潜めてこちらに合図を送ってきた。


深く息を吐いて集中力を上げ、魔法を発動させる。オレの唯一使える遠方攻撃魔法。雷の矢。

矢をつがえる動作をすると雷で出来た弓と矢が構成される。バチバチと光が弾ぜる矢で狙いを定め、射つ。



ーーチッ!



軽い音と共にオレの手から魔狼の群れの中心に光が走り、まるで雷が落ちたような轟音を響かせた。着弾した近くにいた魔狼二頭が倒れた。


突然の落雷に驚く魔狼達の前にアウソが現れた。雷で気が立っている若い雄魔狼が四頭、アウソ目掛けて襲い掛かってきた。

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