第129話 黒斑の病
床一面に果物と、鶏肉、蛇肉、魚、猪、芋虫の焼いたみたいなやつ、大きいバッタ、そして何かの葉野菜が置いてある。何の葉野菜か分からない。芝生みたいな臭いがするが。
「
いただきますに似た仕種(しぐさ)をして食べ始める。流石に虫とか草はよく分からないので食べられそうなものから手を伸ばす。
「それで、カリアから話があると聞きましたが?」
「スワ、魔力中毒というものを知っていますか?」
「マリョクチュードク?」
「もしくは魔力病」
「マリョクビョウ……、そういえば、先代が黒斑の病が、貴女達の言葉でマリョクビョウと言うのだとは教えてもらいましたね」
味付けが塩。
やけに野性的な味がする肉を食べながら二人の会話を聞いている。黒斑の病か。魔力中毒に黒斑なんか出たかな。
「それはどういう病ですか?」
カリアが訊ねるとスワは食べ物を置いて思い出す素振りを見せると、ポツリポツリと話す。
「皮膚が斑に黒くなっていて、頭痛。吐き気、ふらつき、後高熱が出て体の痛みに苦しみ、そうして体中が黒くなると冷たくなって死ぬんです」
怖い。
だから黒斑の病か。
「…………原因は?」
「分かりません、突然倒れますので分からないのです。でも、それは大昔の話で今はもうありません」
スワの話を聞いて、カリアは一つ息を吐いた。
「昔の魔力病の症状に似ている。今はもう魔力耐性が上がって黒斑が出ることもなく死亡することも無くなったけど。スワ、実は世界樹の根元で暴れるあの竜(クク)はその魔力病に侵されている可能性があります」
「!」
「しかし、竜(クク)は魔力耐性がとても高い。なのに魔力病に侵されているというのは異常です。しかも見てみると症状は非常に重く、もう長くは持たないかもしれません」
「ど、どうにかする事はできませんか?」
スワが焦る。
「分かりません。でも明日、竜(クク)に接触して調べて見るつもりです。ところでここには紅破(クバ)の葉はありますか?」
「どういう物ですか?」
「掌程の大きさで、葉は赤みかかった色をしています。葉は全体的にギザギザとした形で、小さい木苺に似た黒い実を付けます」
「ウーム、見たことはないが実と一緒に探させましょう」
無言でバラクが立ち上がり、数は減ったがまだ家に張り付いていた獣人(ガラージャ)達を集めるとウニャウニャ説明をし始めた。今はネコの翻訳はないがだいたい予想はつく。
「他は何か必要なものはありますか?」
「水を集めて置いてください。明日、接触するときに間違いなく暴れるでしょうから」
「わかりました。全員に集めるよう指示を出しましょう」
食事を終えて明日の作戦会議を始める。
作戦の内容はこうだ。
明日の早朝、霧に紛れて近付きドラゴンの言葉を話せるキリコに説得をしてもらい、反転の呪いをもつオレが異常な魔力を反転させて黒から白に出来ないかを試す。それで治まるならよいが、出来ないなら紅破の葉を煎じて飲ませる。それでもダメなら奥の手を使うという。
「竜は火を吐くけど、大雨の後の霧で森は燃えにくくなるから多少は楽になるはずよ。あと気を付けないといけないのは尻尾と爪」
「師匠、風も気を付けないと」
「そうだ、風もね。できるだけ背後から気配を消して、素早く接近しないと。ダメでもコッチとキリコが何とか気を引くから、アウソとライハはくれぐれも死なないように気を付けるよ」
「はい」
「了解です」
「あと、ネコも」
『うぃーす』
相手は竜なので予想外の攻撃が来ることもある。何せ年齢や個体、性格によってどんな攻撃が得意か分からないから細かく作戦は練れない。
それでも全力で攻撃は全て回避することをしつこく念を押された。
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