終末インティファーダ

木根間鉄男

第1話-序章-くだらない日常

世界は、あまりにもつまらないと思わないだろうか?

俺、朝日時雨はここ、私立日高学園高等部の302の教室から世界をのぞきそう思う。

どうしようもなく、世界はつまらない。

毎日日が昇り、学校に行き、家に帰り、日が沈み眠る。

毎日この繰り返しだ。

社会人になると学校が仕事になるが、それだって普段のくだらない日常さ。

この世界には刺激ってものが無いんだよ。

「はぁ…」

俺は教師に見つからないように小さくため息を吐く。

友達といても、ゲームをしていても、俺はどこか退屈を覚えている。

退屈を埋めてくれるのなんて、ロックンロールしかない。

ロックを聴いている時だけは、俺はなぜか退屈を忘れる。

ロックが好きだから、という理由だけではない。

それが持つ、叫びが好きなのだ。

世の理不尽を歌い、自らが編み上げた最強の音を奏でるサディスティックなまでの音楽が。

俺の脳内では流行りのバンドの曲がいつもループしている。

じゃないととてもじゃないけどこの日常が耐えきれないから。

「あぁ…誰でもいいから、非日常をくれないか…」

つまらない俺の人生、たった一つでもいい、非日常をくれないか。

このくだらない世界を生き抜くための、スパイスが欲しいんだ。

けれどどれだけ願ったところで非日常なんて起こらない。

教室にテロリストは押し寄せてこないし、突然ミサイルが降ってきて街一つ焦土と化すこともない。

悪の怪人も、世紀の怪盗も、探偵も英雄も勇者も剣も銃も魔法もない!

無いものだらけのこのノンフィクションで、俺は一体どうしたらいいというのだろうか。

「助けてくれよ…ロックンロール…」

けれど、この時の俺は知らないのだ。

退屈すぎる日常がどれほど大切で、かけがえのないものだったのかを。

そして、非日常は俺が望んだ以上に、絶望的だということも。


これは俺の物語。

退屈すぎる平凡な少年が、非日常の海に沈みこみ、どうすることもできなかった笑い話さ。


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