黒の世界だけが、世界だとおもっていたんだ。
くみぐみ
第1話 日常
人間の世界では、どこにでもある、森の小さな木陰の側で、この物語の主人公(ベルベット・ローズ・ウォーター)はいつものように自分より少し大きめの椅子の上に、横になりながら心地いい風に、ユラユラ揺らされ、うたた寝をしていた。
すると、コツコツと足音が聞こえてきた。聞き覚えのある靴の音と“血”の匂いで、ベルベットは、誰だかすぐに分かった。
その近づいてくる足音の人物は、小さいころから何故だか、唯一ベルベットを気にかけてくる(ブラウン・ブラック・カーリスト)だった。ブラウンは背が高く髪の色がグレーで、少し細身の男だ。笑顔が特徴的で、笑うと目が細くなる。ブラウンは椅子の近くで立ち止まり、眠っているであろう、ベルベットにそっと話しかけた。
「やっぱり、ここに居たか。」そう言うと、心なしか嬉しそうに微笑む。
ベルベットは、寝てるのか瞼を閉じたままだ。
それを知ってか知らずか、ブラウンは尚もベルベットに、話を続ける。
「ベルベット。。俺、、好きな人ができたんだ。」そう言うと、少し顔を赤く染めた。
すると、椅子で寝てると思われたベルベットが、瞼を少しあけた。
『へぇー。。。』返事はしたものの、全く興味がないようだ。
「“アリカ”って言う、名前の女の子なんだが、気が強くて、笑うと可愛くて、嘘つくと鼻の穴が膨らむんだっ。ふふっ。ははは。」ブラウンは、“アリカ”の事を愛しそうに話す。
「初めて、好きだって思えて、それに守りたいって思ったんだ。それに・・・。あっ、なんでもない。ベルベットには、伝えておかないと、とおもってさぁ。」
ベルベットは、聞いているのか、寝ているのか返事をしない。心地いい風の音だけが、2人の沈黙をまぎらわせている。
するとブラウンは、返事がないベルベットに、しびれを切らし顔を近づけて、耳元に話しかける。
ゴソゴソ「なぁー。ベル。聞いてるのか?」
すると、ベルベットは怪訝そうに目を開いて、キッと睨みつけながら答える。
『その名前で呼ぶな、ブラウン。なんだよ。。さっきから、人が気持ちよく寝てるのに。』そう言うとまた、ゴソゴソと身体を、動かして瞼を閉じる。
ブラウンは呆れて「ははっ。」と、笑った。
すると、いきなりベルベットは、瞼を閉じたまま、酷く冷たい声で
『“アリカ”だろ? 私は あいつが、嫌いだ。』と、言い放った。
それを聞いたブラウンは、凄く悲しそうに聞き返す。
「どうしてだ?ベルベット教えてくれ。」
ベルベットは、身体を椅子から嫌々起こし、ブラウンと向かい合う形となり、凄い形相で睨みながら
『あいつの、血の“匂い”は、すごく嫌いだ。』そう言うと、ベルベットは、ガバッと言う音とともに、また寝る体勢に戻った。
ブラウンは、何故かそう言われるのを知っていたのか、「ふっ。」と笑いながら、話を続ける。
「どうしてそんな風にしか、とらえられないんだ?・・・ベルベット。」
『・・・虫唾が走るだよ。特にあの笑顔という、行為がな・・・。』ベルベットは、人喰いの中でも生粋の純血で、純血の人喰いは、他の人喰いとは、違う点が沢山あるのだ。その中でも感情と言うものが分からないというのが、その1つなのだ。
だから時には、ひどい言葉をなどを、いう時があるそれを、知ってるだろブラウンは、冷静に聞いていた。
そして、続けてベルベットは言う。
『どうして、私にわざわざそんな、“どうでもいい事”を言いに来たんだ?気分が胸くそ悪いんだか。』
失礼な、態度や言葉は、いつもの事なのだか、なぜか今日少しは、ベルベットが優しい言葉をくれるんじゃないかと、期待してしまった、ブラウンは哀しくなりはしたが話を続けた。
「ベルベットには、隠しごとしたくなくて」そういうと、少し悲しげに微笑んだ。
しかしベルベットは、喋る、聴く、考えると、いう行為が面倒くさくなり、無視を決め込んだ。
それを長年付き合ってきた仲だからなのか、すぐに気づきブラウンは、困ったように頭をガシガシかきながら
「ベルベットとは・・・ずっーとこのままの関係でいたいんだ・・・ずっーと・・・いいよな?ベルベットっ。」
そして、また心地いい風が二人の間を通り抜けた。
何分たったのか分からないが、ブラウンは何かを思い出したような素振りをみせ
「じゃあ、俺用事があるから帰るな。ここで寝て風邪引くなよ。」そう、ベルベットに言うと、ブラウンは、元来た道の方向に向かって歩き出した。
「この会話が最後じゃないといいんだけどなぁ。。」と、疑問が残る言葉を残して去っていった。
ベルベットは、ブラウンが居なくなった事にも気づかずに、気持ちよさそうに眠っていた。
ベルベットは寝言なのか、分からないような、言葉をポツリと呟いた。
『ブラウン。』
『私は』
『お前の』
『血の匂いは“嫌い”じゃないよ。むにゃむにゃ』
やはり、寝言なのかその声は風にかき消されてしまった。
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