職業、キャラクター。
わさすら
サービス終了後のプリンセスたち(1)
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【重要なお知らせ】
『スターダム・プリンセス』提供終了のお知らせ
誠に勝手ながら、このたび『スターダム・プリンセス』は、2020年 8月30日 15時を持ちまして、本サービスを終了させていただくことになりました。
サービス終了までのスケジュールに関しましては、ゲーム内のお知らせをご参照ください。
お楽しみいただいている方々には、このような結果となってしまい、大変申し訳ございません。
サービス終了まで残りわずかですが、引き続き『スターダム・プリンセス』をお楽しみいただければ幸いです。
本ゲームを遊んでいただき、誠にありがとうございました。
『スターダム・プリンセス』開発・運営チーム
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事務所の端に積まれたダンボールには、うっすらとほこりが積もっていた。
軽くなぞってみれば、指先がまっしろ。ホワイトクリスマスの気分になれるかもと思ったけど、舞い上がるほこりを見ていると、風情もなにもない。単に汚いだけだ。
マスクをしてから、溶けかかったガムテープをひっぺがし、中身を確認する。
ピースサインを向けながら、ありったけの笑顔を向けている、紅いロングヘアーのアイドルのポスター。
……あぁ、みかりんのSSRポスターだ、これ。
「こらこらこらこらこら~~~!!! 人の!! 人の記念ポスターを勝手に発掘するんじゃあなあああああいっ!!!」
私が無遠慮にポスターを眺めていると、窓拭きをしていたみかりんこと
ポスターの詰まったダンボールを両腕で抱え上げ、そのまま床へ盛大にダイブ。見事なトライだ。
「掘ったものは仕方ないじゃん。むしろ貴重な史料を見つけたことに感謝してくれたまえよ」
「史料なんか……じゃあ、ないんだから。これは、アタシの駆け抜けた証なのっ! っったぁ~……」
後生大事そうに自分のポスターたちの収まったダンボールを持ち上げ、スタスタと自分のキャリーバックのもとへ向かう彼女は、実際、誰よりも前向きで、上昇志向の強いアイドルだった。
マネージャーにトップアイドルを目指すと宣言し、人一倍レッスンを積んで、CDの初動が悪いことを誰も見ていないところで泣き、はじめての大きなライブでありったけの笑顔を見せる――そんな、気丈に頂点を目指す女の子の姿が、キャライベントでよく描かれていた。
……終わってしまったものにもこだわる子なのだ。リリース一ヶ月目の人気投票で一位に輝いたのも、いま思えば納得だ。
「……で、
「と、いいますと?」
「アタシと同じリリース開始SSR組、ポスター配布組だってこと、忘れてないわよ?」
くるくると器用にポスターを丸めながら、私に尋ねてくる。一匹狼を気取りたがるくせに、根は姉御肌なんだから。
「もう宅配便に投げたよ。ホントはマネージャーさんに預けよっかなって思ったんだけど、『記念にもらっとけ』って」
「やっぱり。そんなんだと思った」
「私がクールタイプだってこと?」
「……アンタがマネージャーの言うことだけは素直に聞くってコト」
「そりゃどうも」
もう少し気の利いたことを言いたかったけど、元来気の利いたセリフは言えないタチだ。
『少しそっけなく、つかみどころがなく、どこか冷めたようにも見えるが、アイドルというものは心の底から楽しんでいる。』
私こと、
と、みかりんと他愛のない冷え切った話をしていると、にこやかなアッシュブラウンのツーサイドアップが、リボンをぴょこぴょこ揺らしながら事務所に入ってくる。
「蜜香さーん、結姫さーん、つばきさんから差し入れですー!」
ひよりちゃんは大きなダンボールを両腕に抱えていた。150cmにも満たない小さな体では、さぞ重労働だろう。足元ふらつく彼女からダンボール箱を受け取り、事務所の中央にどんっと置く。
「まーだ残ってたんだ。食堂のプリンセスは」
「まさに残ってた理由がこれ、だそうです」
何か勘付いたみかりんが、ひよりちゃんが持ってきたダンボールを開ける。
中には乱雑に詰め込まれた、コッペパン(AP回復アイテム)と栄養ドリンク(BP回復アイテム)。
「……回復アイテムって、勝手に整理されるもんじゃないの?」
「ゲーム的には回復アイテムでも、食べ物であることには変わりないみたいです。だから、わたしたちにも『協力』してほしい、って」
「協力ぅ?」と首をかしげるみかりんに変わって、課金アイテムショップの受付を担当してくれたつばきさんの意図を代弁する。
「食物の廃棄にも金がかかる、ってこと?」
「……そういうことです」
苦笑いするひよりちゃんの言葉を聞き、みかりんは「ッハァーッ!!」といつものようにかんしゃくを起こす。
「あーの守銭奴、サービス終了まで銭ゲバかこんちくしょー!! アンタが石購入煽るせいで心象悪くなってたんだっつーの!!」
「そう言わないでください蜜香さん。これと同じ量、つばきさんは一人で持って帰るみたいですし……」
そうは言っても、持たされるのが質素なパンと、成分不明のドリンクでは、割りに合っているのかどうか。
「……とりあえず分配しない? あと、ちょっとお腹も減ったし」
やや気まずい雰囲気になった二人に対し、箱の中へ手を伸ばしながら提案する。
しばらくの無言の後、二人ともコッペパンと栄養ドリンクの分配に着手を始める。
一人あたり、それぞれ10個ずつ。毎食にしては栄養偏重、おやつにしたって味気ない。
軽いため息が漏れる――眼前の問題と比べれば、ささいなことなんだけれども。
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